田子坊を歩くのは午後がいい。ここに来る人の目的は建物ではなく、ショップに惹かれてやってくるからだ。
もし新天地の石庫門が中産階級家庭の生活環境を感じさせるものなら、田子坊は普通の家庭の情景だろう。洗濯物が干してあったり、通りにゴミ箱やトイレがあったりすることで、今はどうあれ、かつてはここに住んでいたのは決して金持ちではなかったとわかる。
筆者は2回ほど田子坊を訪れた。一度目は274弄で、雑然としていてあまり良い印象がなかったが、2回目に210弄に来たときにはそこの清潔さに驚かされた。
田子坊の特徴は、移動もせず、変化もしない形で石庫門建築を保存しているところだ。秩序はないが、それがかえって「そのまま」感を出している。
もちろん上海にはまだもともとの石庫門が並ぶ里弄がある。
3.建業里(工事中)
建国西路と岳阳路交差点周辺 (地図)
「建業里は今のところ上海で最大の石庫門建築地帯だ。1930年に200棟近くの石庫門があった」。筆者はこの資料をみて2009年11月のある日、この場所の探索に来たが、すでに工場地区になっており、石庫門はまったく見当たらなかった。ここはまさに空前の規模で再開発が行われている。第2の「新天地」が出来るらしい。
このことについて、ネットではディベロッパーに反対する意見が出ている。
書き込み「私の考えでは、このように新しく建てたものは歴史的建造物ではなく、ただの骨董品のコピーだ」
ディベロッパー「われわれは建て直しという方法で、完全に石庫門の復活をさせるのです。石庫門の居住文化が継承されていることを感じ取っていただくが、しかし居住と言う面ではずっと快適になるのです。」

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再開発後の建業里(完成予想図)
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再開発後の建業里(完成予想図) |
新天地、田子坊、建業里以外に、上海に残っている石庫門は以下の通り。
上海の地方史事務局のHPで、地下鉄2号線の江蘇路駅付近一帯には石庫門建築がたくさんあったようだ。
1870~1944年
上海で建築された石庫門住宅の分布状況
街道名称 |
棟数(箇所) |
戸数 |
占比重(%) |
合計 |
34 |
531 |
100.00 |
華陽路街道 |
25 |
424 |
79.85 |
江蘇路街道 |
7 |
81 |
15.25 |
新華路街道 |
1 |
14 |
2.64 |
武夷路街道 |
1 |
12 |
2.26 |
しかし筆者がこれらの道に行ったときには何も見られなかった。
このHPでは特に万渡航路の「鑫森里」に58棟、「致慶里」に40棟の石庫門があるとしている。
「10年前にとり壊されたよ。今では20階建てのビルが建ってるね。」
万渡航路の高級住宅地でガードマンを務める上海人のおじいさんは言う。
「それならこのあたりに石庫門房子はありますか?」
「ないよ。全部なくなった。」
彼の口調には、それを惜しむ様子はみじんも感じられなかった。