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<連載内容>
連載は全4回です
・第2回 輸出の全体像を見る…輸出スキームと、政策・行政の役割
・第3回 上海で売れるためには…課題と成功要因
○はじめに
地方の疲弊が続く、日本。農村では高齢化が進み、限界集落という悲観的な言葉もあるほどだ。都市部であっても商店街の衰退が進み、中心地区の空洞化が深刻な問題となっている。
片や中国。リーマンショック以降の不景気もつゆ知らず、GDPの成長率を毎年8%前後で維持し、高度成長の真っただ中だ。上海に代表される沿岸部の都市では、東京以上に活気があふれる状況となっている。街を歩けば目にする、あふれる高級車、建設相次ぐ高級ブランドショップ。そして、高価な商品をこれでもかというほど買い込む中国人の高所得者。日本の地方社会での元気のなさとは、全く対照的である。

そうした中、日本の地方の特産品を中国・上海で売ろうとする動きが活発化している。キーワードは「地産外商」だ。地元の物を地元で消費する「地産地消」だけでは経済効果が弱いとして、外部への積極的な販売で外貨を稼ぐという作戦である。ターゲットは成長著しい中国・上海、その中の高所得者層だ。日本の農産物は関係者の必死の努力によって、徐々に上海の市場に浸透しつつある。特に最近は上海万博の影響もあり、日本からの輸出相談が増えるなど期待がさらに高まっている状況である。
しかし、関係者の不安は大きい。本当に、上海で特産物が飛ぶように売れるのだろうか。それ以前に様々な障壁があるのではないか。こうした障壁を考えると、輸出に失敗するケースのほうが多いのではないだろうか、といった問題点である。
本レポートでは、筆者の上海での視察・取材を踏まえ、日本の農産物販売の現状と今後の可能性について、連載形式で紹介する。まずは、以下の三点について、検討してみる。
1.農産物は中国・上海で果たして売れるのか。
2.よく売れるようにするにはどうしたらよいか。
3.そして、本当に日本の地方活性化に貢献するのだろうか。
第1回目は輸出の概要部分についてである。具体的に上海の市場・消費者の現状と、輸出できる食品について紹介する。なお、本レポートでは、農産物は日本の地方の特産食品という定義であり、農産一次品、農産加工品いずれも含む。
○上海のいま
国際金融都市、上海。人口約2000万人、総面積6340km2であり、日本でいえば東京都と千葉県の人々が群馬県の広さの場所に住んでいるようなものだ。上海の一人当たりGDPは約110万円と東京の約400万円には及ばないが、GDPそのものは毎年6.6%で成長が持続していく見込みである。 (Price Water House Coopers「世界GDPランキング」)
上海に住む人々の中でも、一般に一人当たりの年間可処分所得がおよそ40万円以上の層を高所得者層という。彼らは収入に見合う分の消費行動をとると言われており、高価格商品を販売するターゲットとされている。高所得者層のエンゲル係数は35%以下であり、毎年の食費は12.4万円以上にのぼることがわかる 。(三菱総研 関山健「中国経済における発展方式の転換と今後の消費動向」)これは中・低所得者と比べて、かなりの額を食費にも当てていることが分かる。ちなみにこのような高所得者層は上海の人口の約4割を占め、800万人いると言われている。
日本の輸出農産物のターゲットは主に中国人高所得者層である。理由としては、(1)彼らは身分相応の消費行動をとること、(2)中国産食品への不信感の裏返し、がある。2点目に関して、近年日本では毒ギョーザ事件の影響が強く、中国産食品への不信感が非常に高い。同様に中国国内においても、牛乳へのメラニン混入事件、最近では下水の油をリサイクルしているといわれる「地溝油」事件など、食品安全の根底を揺るがす事件が後を絶たない。中国人消費者もこうした状況に危機感を示しており、消費に余裕のある高所得者層は特に食品への安全・安心志向が高い。「日本」ブランドの食品は一般に安全・安心とイメージされているため、彼らに受け入れられやすいのである。
ただターゲットが高所得者層だけであるのはなぜか。その原因は、価格面の問題である。中国へ食品を輸出する際には、関税と非関税両面の様々な障壁が立ちはだかる。関税、検査費用、物流コスト等を含めると、日本の輸出された農産物は日本価格の2倍以上に嵩んでしまう。例えば、青森から輸出されたリンゴ「富士」は東京では1玉およそ150円だが、上海では200~400円前後する。ちなみに中国で生産された「富士」は60円前後であり、現地物価でみてもかなり高いことが分かる。このように高価格であるため、中国の一般消費者にはなかなか受け入れられず、おのずと高所得者層に限られる。販売先は小売店のほかにも日本料理店もあるが、日本料理屋に一般消費者がそこまで足を運ぶことはない。
○販売できる輸出品
前項にて輸出の際の障壁を挙げたが、輸出可能な農産物の種類にも制限が掛けられているのが現状である。加工されていない一次品ではリンゴ、ナシ、米の3品だけだ。米も特定の工場で精米したものしか輸出できない状況である。また、畜産物(牛、豚、鳥肉)はBSEの発生以降、輸出禁止状態となっている。
一方で加工食品に関しては、取引制限は基本的にかけられていない。上海に特に輸出されているものとしては、以下の食品が挙げられる。(JETRO 大橋聡「日刊通商広報」2010年3月26日付)
1.クッキー、飴などのお菓子…価格もそこまで高くなく、簡単に食べられるため人気
2.醤油などの調味料…中国にない調味料として重宝
3.茶…緑茶、抹茶など日本独自のお茶のニーズがある
4.焼酎、日本酒…メーカーの営業努力により、徐々に浸透
5.乳幼児用育児食…メラニン事件以降、粉ミルク・離乳食が人気
これ以外にも、小売用の加工食品は多く輸入されており、日本産食品は上海の高所得者層の間に普及しつつある。また、日本の大手食品メーカーが現地生産、輸入している食品もかなりあり、それらも日本ブランドの普及に大きな貢献をしている。
ただし、今年4月末に発生した口蹄疫の影響で乳製品の輸出が停止しており、離乳食の輸出も禁止となっているため、関係者の危惧の念が高まっている状況だ。
○次回の予定
次のレポートでは、農産物輸出・販売の関係者への取材を元に、現状を把握する。
(文責:居波晃弘)
居波晃弘氏プロフィール
● 一橋大学商学部4年(現在休学中)
● 上海の企業でインターンシップ中。
● 大学では、サークル・ゼミナールともに地域活性化、商店街活性化に関わる。 地域ブランドの開発・販売に関わった経験がある。
● ご意見・ご感想のある方は、a.inami17355@gmail.comまでお願いいたします。 |
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