|
2006年春節
年夜飯

いよいよ中国が最も中国らしくなるイベント、春節がやってきました。
筆者も毎年春節になるとこのコーナーに春節の話題を書いていますが、これも今年で4回目になってしまいました。2006年は、いろいろ話題になった年夜飯について少し取り上げてみようと思います。
春節の大晦日(今年は1月28日)から新年の一日目、すなわち大年初一(今年は1月29日)にかけてのビッグイベントが、年夜飯と守歳です。
■年夜飯と守歳■

農村では、旧正月の大晦日、つまり夕除から新年にかけて、御先祖や神様にお参りする習慣がありますが、上海では都会化の波が進み、その習慣は薄れてきました。それでも年夜飯と守歳の習慣はやはり根強く残っています。年夜飯の本来の意味は、除夜に食べる食事のことを指し、日本ではさしずめ「年越しそば」がこれに当たると思われますが、こちらでは家族みんながテーブルを囲んで、豪華な食事を楽しみます。除夜の鐘が「ゴーン」と鳴り厳かに新年を迎える日本と、爆竹を「バンバン」鳴らして華やかに新年を迎える中国ではやはり文化の違いを感じます。
この時には、海外や出稼ぎに行っていた家族もみんな実家に戻り、もしどうしても戻れないのなら、その人の席は必ず残しておく、といわれるぐらい家族全員が集まることを重視します。伝統的には、家族で一番長老のお年寄りを中心に年齢順に座っていきます。春節に限らず、中国では丸いテーブルのどの場所に座るか、ということを非常に重視しているのは皆さんご存知の通りです。
食事には地方によってかなり特色があるようですが、一般には「十大椀」といって10の大きなお皿が登場するようです。上海語で「十全大五」ともいいます。例えば学生や受験生がいたら、粽や餅を出す習慣もあるようです。餅は中国語で「年糕」といい、この発音NianGao が「年高」と似ているため「年年高」というゴロで非常に縁起が良いとされています。
「守歳」とは年夜飯を食べた後に、久しぶりに家族が集まり、様々な話題に華を咲かせることを言います。古代晋の時代からすでに風習として記載されていますが、その当時監獄にいた犯罪者も、仮に死刑囚であってもこのときに限っては家に返され、家族と守歳することを許されたと言います。隋や唐の時代の宮中では香木などを一晩中燃やし、踊りや酒を交えながら盛大に迎えたとようです。ここから、中国人が古代からいかに春節を大切にしてきたか、よく分かります。
現代になると、商業的色彩も強くなり、年夜飯の意味合いも少しずつ変化してきています。それでも、春節の大晦日に家族で食べる年夜飯は大切に受け継がれていて、もしこの大晦日の年夜飯に招待されたのなら、これはあなたとその中国人の家族との関係が非常に深いことを意味します。そんなときは、遠慮せずにご馳走になりましょう。
■
今年の年夜飯■
日本の新聞などでも、杭州のあるレストランのテーブル単価19.8万元(約286万円)の年夜飯は広く紹介され、話題になりました。結局は問い合わせの人たちばかりで、本当に予約をした市民は出なかったそうですが、毎年この年夜飯にまつわる話題は尽きません。

企業などが従業員に対して開く年夜飯は日本で言えば忘年会の感覚ともいえるでしょう。たとえば、新入社員は出し物を演じたり、上司と乾杯をしたり、一種の親睦会的な意味合いがあります。そのため、春節前の1ヶ月はどこのレストランも一杯で、かきいれどきになります。上海市内の有名なレストランでは、早くから予約でうまっていきます。中には、去年から予約をしていく場合もあるほどで、この時期の売り上げがレストランの年間の売り上げを大きく左右するといっても過言ではありません。
ちなみに昨年2005年上半期の上海市の飲食業界の営業収入は196.58億元で、前年比28.4%の増加となっており、この増加傾向は今年も続くものと見られています。
今年の大きな特徴として、年夜飯といえばあくまでも中華料理というイメージだったのが、西洋料理レストランも積極的に西洋料理の年夜飯をPRしているという点です。1980年代には10軒もなかった上海の西洋料理レストランも、今では1000軒を越えるにまでに成長しており、海外から帰国した中国人を中心に、大晦日を西洋式のディナーで楽しもう、というわけです。
この時期、一般に中華料理レストランが繁盛しているのに対して、西洋料理レストランでは閑古鳥が鳴いていることが多く、ここで新しいビジネスを展開したいと考えている店も多いようです。
そして、これも最近注目を浴びているのは、大晦日の年夜飯を食べた後、そのまま高級ホテルに宿泊して新年を迎えるというケース。この背景には、地方から上海に仕事をして、上海の戸籍を取得したいわゆる「新上海人」が増えているところに理由があります。彼らの多くは、上海に親戚を持たないが、上海に自宅もあり、田舎に帰らずに上海で新年を迎えるという人たちで、ホテルなどにいって仲間たちとワイワイ新年を迎えようというわけです。春節休みでビジネス客がさっぱりのこの時期、ホテル側にとっても新しいビジネスチャンスとして期待されています。

それでもやっぱり、大部分の上海市民は家庭で酉年最後の年夜飯を楽しむようです。『東方早報』が、上海市内4346人を対象におこなったアンケート調査では、今年は7割の人が家で年夜飯を楽しむと答えているように、やはり家族団らんを大切にする上海人の実態が浮かび上がります。
家庭では当然大部分が自分で料理をするようですが、少数ですが、専門の調理師を家庭に招いて作らせるところもあるようです。最近では、有名レストランのお惣菜も人気が出始めており、春節セットを発売しているレストランも登場しています。
一方で、外食すると答えた人の選ぶレストランの大部分は上海料理、つぎに四川料理、広東料理と続きますが、半分以上の人は老舗のレストランを選ぶ傾向があるようです。辛いものが苦手な人の多い上海人ですが、四川料理が2位にきたのは少し意外でした。さらに価格帯は一人あたり100元から150元が人気で、いつもよりいいものを食べるけれども、やはり日ごろ慣れ親しんでいる上海料理が一番といった傾向がわかります。
年夜飯は、単に家族が集まって食事するだけではなく、その時代の経済、流行を反映しており、その変化を見ていくことは非常に興味深いものです。筆者も今年の大晦日は上海人の家庭に訪問してきます。
(山之内 淳 中医ドットコム)
|