エクスプロア上海TOP 上海TOP > FEATURE >加藤嘉一氏単独インタビュー-前編-
加藤嘉一氏 加藤嘉一氏
加藤嘉一氏
 中国で最も有名な日本人、として定着しつつある加藤嘉一氏。最近では日本のメディアからも注目され、テレビ出演、出版、講演などのオファーがひきもきらないとか。
 中国では2005年以降テレビを中心にメディア出演が始まり、鳳凰電視台やCCTVの番組で準レギュラー出演、その後映画製作にもかかわる。2008年からは本格的な執筆活動に入り、今年2010年6月には初の自伝的書ともいえる「从伊豆到北京有多远」を出版、その2ヶ月後には新刊「中国、我误解你了吗?」を上梓した。

-今回は新刊「中国、我误解你了吗?」のプロモーションで上海に?

 残念ながら今回の尖閣諸島の問題ですべて無期延期となってしまいました。本来は北京、武漢、上海、杭州、南京、蘇州、広州、重慶をまわり、大学での講演、サイン会、テレビ取材、文化イベント等を行う全国プロモーションツアーを企画していたのです…やはり今回の問題の影響は大きいです。
 主催者側のほうは、「むしろこういう時期だから来てほしい」と言ってくれたのですが、公安局から直接電話を受けまして。「今は公衆と面と向かっての対話は避けた方がいい。顔が知れているので何かと危険がある。君を守るためにこの時期にはやめた方がいい」と言われました。

-「中国で有名な日本人」として危険な目にも?

 シドニーマラソンに参加するため、オーストラリアに滞在していたのですが、帰国して北京の空港で記者に囲まれました。疲れていましたが1時間くらい尖閣問題について話しました。そのあと地下鉄に乗っていたのですが、そこで数人に囲まれ、この問題について問い詰められました。このことからも、中国では一般の人ですら、いかにこの問題に敏感になっているかわかります。胸倉をつかまれ、なぐられるかとも思いました。
 状況は理解できます。一部の過激な人たちが僕のような者をガス抜きの対象にしているんだと思います。こういうこともネタの一つにできるから、と割り切っています。
 この時はすぐに解放されず、こちらからは「まず落ち着こう」と切り出し、「ここは公共の場所だし、この場で議論はしたくない」と話しました。
 しかし、9月18日の北京デモのときは現場にいて、空気を感じたかったです。現場で状況を見るのは極めて大事なことだと考えているので、その場にいなかったというのは心残りです。

-その場にいてはさらに危険だったのでは?

 そこで仮に殴られたとしても、それはそれで教訓というか、経験になります。こういう時期に、このような立場の自分が殴られた、ということがもし起これば、自分にとっては一つの経験、収穫になります。実際に胸倉を掴まれた話は鳳凰電視台の「锵锵三人行」に出演した際ネタになりましたし。もちろん、自分の家族に危害を加わえられるのは困りますが、自分自身に向かってくる、というのはわかるし、中国を理解し、人に説明する上での材料としての経験にもなります。
 中国語ブログ(http://blog.ifeng.com/article/1320478.html)での書き込みや、ほかのネット上にもひどい中傷や誹謗があります。時間がないので全部は読みませんが、そういう事実があることも把握しています。しかしここで感情的になってもエネルギーの無駄ですし、そういう次元で議論しても仕方がありません。自分が信じることをひたすら発信していく、これが僕のスタンスです。

-日本人からは「中国寄り」と見られることも?

加藤嘉一氏 僕のことを「中国寄り」と見る人もいますが、実際は中国のことを好きでも嫌いでもありません。今後日本がつきあっていかなくてはならない対象として見ています。自分自身の身の安全もありますので、正面切って中国の体制を批判するような書き方はしません。しかしこういう問題点もあるよ、と言わなければいけないことは言います、弁証法です。これは戦術なんです。
 言論活動をしているジャーナリストは皆そうだと思います。社会は複雑だし、自分の縄張りやカラーがあります。一貫性を求められることもあります。本音をどのように言うか、というのは別問題なのです。
 中国にも右派と左派があり、 たとえば中国の南方周末はリベラル派で环球时报は保守派で、完全に分かれているんですが、僕は両方に寄稿しています、これは中国人も含めてほかにいません。やはり縄張り意識があるからですが、これを破るのが僕の戦術です。自分に色をつける必要はないし、レッテルを貼る必要もないと思います。テーマによって寄稿先を変えます。このテーマならどこで発表するのがよいか、イデオロギーから出発して物事を見るのではなく、物事の性質によって、どこで発信すればよいのかを判断する。これがやるべきことだと思っています。尖閣問題、チベット問題など、問題によって人間の意見が変わるのは当たり前です。これから日本への発信も増えていくと思いますが、右、左と言われる双方とつきあっていきたいですね。


加藤嘉一氏単独インタビュー後編はこちら







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