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■F1  SHANGHAI  STATION■

 

~上海F1 GPがもたらす経済効果は如何?~

 

  

 始まってみないとなんとも言えないだろうが、筆者個人的には上海市民はF1に対して、いまひとつ関心がないように思われる。その証拠に、筆者の元にも上海人の友人からチケットは要らないか?という電話がよく入る。一部のハイクラス席のチケットを除いてだぶついているのではないかと思われる。しかし、淮海路や新天地など市民が多く集まるところでは、マシンが展示されていたり、レースクイーンが立っていたり、それなりに雰囲気を高めようとする努力は伺える。果たしてこのF1で上海の経済がどの程度潤うのか、さまざまな数値が発表されているが、代表的なものを整理してみる。

 

安すぎるチケット?!

(新天地にて イベントの準備中)

  一部の車好きを除いて、「F1」の名前をよく知っている若者は上海といえどもまだ多くない。最近になって、有線のドキュメンタリー専門のチャンネルで、海外のF1に関する番組を頻繁に放送するようになっているが、その効果がどの程度であるのかは、かなり疑わしい。海外のマスメデイアは、上海のF1のチケットが安すぎるのと、いまひとつ協賛企業の盛り上がりに欠けていることを指摘している。

 たとえば日本の鈴鹿サーキットで3日間有効の一番安い観戦券+指定席券で約30000円強、S席で約6万円ほどする。一方、上海で一番安いチケットは3日間セットの座席券で1060元(約14千円)、最高のVIPでも4万円後半だ。そのため、早くからチケットが安すぎるのではないかという評論が海外のメデイアから出ていた。ただ、上海の物価基準からすると、高価であるのは明らかで、その価値が分かる人ではないと、チケットは買いづらいはずだ。

一方で、中国で始めて開催されるF1だけあって、上海側も円滑な運営を図るために、マレーシアのセバンサーキットと協定を結び、そこに人材を派遣しては経験を学ぶようにしている。これら経験や教訓が生かせるのか、今後を見守りたいところだ。


 

2.        巨額の投資額をどう回収するか?

 たった1年半の間に、のどかな農村風景が、一変して現代的なサーキットに変化してしまった。上海にいればいつも見られる光景だ。ここで、第1期の投資額は26億人民元となっている。実はこれはマレーシアのセバンサーキットと比べると、3倍ほどのコストがかかっていることになる。マレーシアでは1.25億米ドルで完成させた。さらに上海の場合は2期工事で50億人民元の投資計画がある。しかもこれだけではない。上海F1組委員会ではFIA(国際自動車連盟)に対して、2000万米ドルの登録費用を上納している。さらにこの登録費用は毎年一定の割合で増加していくという。今回の上海でのF1は、FOCAのバニー・エクレストン会長と2004年から7年の契約でサインされているため、7年後にはこの費用が17.5億元にまで増加するという試算もある。さらに、サーキット場までの交通アクセスの整備、市中心部から嘉定区までの電車線となるR3号線を予定よりも5年繰り上げて完成させる計画など、インフラに投資される額も計り知れない。これほど巨額な投資にも関わらず、上海でF1を行うにはやはりそれなりの計算があってのことといえよう。現在の計画では12年間でこの投資を回収できると試算されている。

 

(F1のシュミレーションを楽しむ市民)


3.        嘉定区の状況

 上海サーキットがある嘉定区にとって、このF1によってさらに自動車産業を中心とした「国際汽車(自動車)城」を5年以内にさらに規模の大きなものにしようとする計算がある。F1を契機に、自動車の嘉定区を世界に知らしめようというわけだ。そのためにメデイアなどもうまく使っている。先日もジャッキー・チェンが香港や日本などのアイドルを引き連れて上海サーキットで一足先にレースを行ったのは記憶に新しいが、その時に取材に訪れた報道陣だけでも360人に及び、世界中で報道された。

 嘉定区だけでもF1に関連する投資総額は130億元に達し、F1・GPに直接関わる人たちだけでも、1200人の雇用を生み出したほか、旅行やサービス業などに関連する業種もあわせると3万人を越える雇用を生み出すとしている。さらに嘉定区内の15のホテルの整備が急ピッチで進み、それだけでも投資額は4.5億元に達した。ついに嘉定区にも5星クラスのホテルが誕生することになるが、これらの資金は企業によって行われるため、政府にとっても願ってもない歳入になる。

 この5星ホテルも、すでに建設中からルノーなどのF1チームが予約を入れたという。このようにチーム1つがホテルにまとまって宿泊するとホテルには少なく見積もっても40万米ドルの収入をもたらす。ここから分かるように、ホテル料金は軒並み大幅に上昇し、いつもなら一泊350元から400元のところが、1200元から1600元にまでなっているところもある。現在嘉定区の星つきホテルの予約率は90%を越えており、ほぼ満室の状態だ。多くは、海外から来るF1観戦客によって押さえられているという。これは何も嘉定区に限ったことではなく、上海市内の高級ホテルも軒並み満室になっており、ポートマン、シャングリラ、ウエステインなど高級ホテルが軒並み稼働率が100%になっている。そのため宿泊料金も軒並み12500元をこえる高水準で推移している。ただ倍以上の料金になった結果、いわゆる一般の宿泊客が遠のくリスクもあり、単純に両手を挙げて喜ぶわけにも行かない。

 F1によって嘉定区では地価が軒並み1平米あたり1000元近く上昇していることは前回にも書いたが、その影響でサーキット周辺20平方キロメートルの不動産の価値が200300億人民元に上昇するという試算も出ている。

 また嘉定区に訪れる観光客もF1の影響で毎年200万人に及ぶといわれており、新たに旅行業界では16.68億人民元の収入が生まれ、8340万人民元の税収が見込まれている。そのほか、広告や放送権などにより発生する税収は、嘉定区の財政に大きく貢献することになるのは間違いない。


4.上海市区はF1で盛り上がれるか?

 日本の鈴鹿サーキットで行われるF1・GPの場合、観客の大部分は日本人であるが、上海の場合は11万人ほど見積もられている観客のうち30%は外国人であると見られている。F1の観客の多くを海外にゆだねなければならない現実がある。逆に国際観光都市を目指す上海にとって、このF1は格好の海外へ向けての宣伝になることは間違いない。その証拠に、2004年の海外から訪れる観光客の数はうなぎのぼりに上昇中で、すでにのべ350万人を突破、これは史上最高であった2002年の記録を更新している。このうち10%F1に関係して上海を訪れた外国人であるといわれている。またF1の様子はテレビを通じて206の国々で放送され、のべ540億人が視聴する計算になっている。世界への宣伝といえば、その効果は確かに大きい。

 さらにチケットの売り上げが約2.5億人民元と試算されており、単純に5%の税率から計算しても、政府には1240万元の税収が見込まれる。もしすべてのF1運営が順調に行けば、F1が上海にもたらす直接的な収入は毎年5億元にのぼると見られるものの、これはあくまでもすべてがうまくいったという仮定のもとでの試算である。現在の上海市内の様子を見る限り、宣伝やPRは決して十分であるとは言いがたく、果たして目標が達成できるかは疑問点も多いように思われる。 しかし最近になって、新天地ではBAR ホンダチームのようにイベントを行うなどしており、最後の追い込みに期待したいところだ。

 さてF1関係のグッズも、9月に入って街で見かけるようになった。F1に関連する商品はすべてFOAの認可が必要だ。また価格も中国の物価基準からするとかなり高いため、協議の末に中国の実情にあった高級スポーツ用品程度の価格に抑えられた。すでにインターネットや携帯電話などで注文が続々と来ているようで、主催者側はひとまずホッとしているようだ。今回のグッズ販売ターゲットは市場調査の結果、1630歳の車好きな青年としており、さらに50台の移動店舗を使ってサーキット会場にも機動的に出没する。ただ、それでも価格は上海の庶民にとっては決して安いものではなく、記念章でも3540元、Tシャツで600元ほどする。やはり帽子と衣類がよく売れているようだ。2010年に万博を控えている上海にとっては、   これらグッズを販売するのも大切な経験になるものと思われる。

(人民広場にて)


5.まとめ 

 世界的にはF1そのもの人気に陰りが見えつつある昨今、現実にF1が赤字で運営されている場合もすくなくない。上海のようにフアン層が確定していないところでは、まだまだ潜在的なリスクがあることに中国の専門家たちも警鐘を鳴らしている。 また上海市内をみてみると分かるように、経済格差や文化レベルの差がますます顕著になる今日、昔のように市民が一丸となってイベントを楽しむということが難しくなってきたような気がする。社会が発展するに従って、カラオケのようにみんながワイワイ楽しむことのできた娯楽から、徐々にお金のある特定の人が楽しむというような娯楽・趣味に今後は変化していくのだろう。

                                 (山之内 淳・中医ドットコム


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