ここ上海でも天気が良ければ2年2ケ月ぶりに接近した赤く輝く火星を夜空に見ることが出来ます。10月30日に最接近し、この11月下旬まではマイナス2等級程度の明るさに見えるそうです。夕方、東の空に現れて夜中に南の空を通り、明け方に西の空に沈んで行きます。ひょっとすると「火星人」の姿が見えるかも知れません。一度夜空を見上げるのも良いかと思います。
中国では、「伝銷(マルチ商法)禁止条例」がこの11月1日に公布されました。また、「直銷(訪問販売)管理条例」が12月1日に施行されます。両法とも消費者保護を目的とした法律であり、中国でビジネスあるいは生活する上で是非知っておいて頂きたい法律の一つです。
更に、「いかなる団体や個人も工商行政管理部門、公安機関にマルチ販売行為を通報する権利を有し、事実である場合通報者に奨励を与える」とし、一般市民等からの情報提供を推奨しています(第6条)。
ここで注意を要するのは、「マルチ商法」を運営して罰せられるのは当然ですが、上記Bの規定で「マルチ商法に参加するだけで罰せられる」ということです。即ち、首謀者だけではなく参加者(結果的な被害者)も罰せられます。
「マルチ商法」に直接関わらないためには、甘い誘いには十分注意し、「うまい話には必ず裏がある」ことをよく考える必要があります。また、勧誘者は前述のように主婦や青年層が多く、知人・友人・同窓会などの伝手を頼って勧誘します。その場合も含めて、中途半端な態度が一番危険です。「ノー」とはっきり言いましょう。更に、「自分だけは大丈夫」と思う気持ちが気のゆるみになり、つけいる隙を与えます。日頃から被害防止対策を考えておいて下さい。併せて、ここ中国では「マルチ商法」は例外なく法律違反となりますので、知人・友人などが勧誘者になっている場合には、直ぐに止めるように伝えて下さい。
また、前述のように、場所、商品、インターネットでの情報の場等を提供するだけで処罰の対象となります(不作為であっても)。「マルチ商法」に直接参加しないことはもちろんですが、これからは不動産賃貸借契約、商品売買契約、などで相手方が「マルチ商法を営む業者」でないことを必ず確認するとともに、契約書には「マルチ商法禁止条項」を織り込む必要があるでしょう。
特に、インターネットで掲示板等のサイトを運営している場合には、「マルチ商法」への勧誘の書き込み等がないかどうかを常に監視し、「マルチ商法」に類する書き込み等があった場合には直ぐに削除する体制を整えて置く必要があると思われます。
(2)直銷(訪問販売)管理条例について
訪問販売は、世界中で古くから行われていた販売方法で、典型的な家庭訪問販売だけでなく、職場に訪問する、商品を持ち歩かずカタログで販売する等その形態は多様化しており、また、その取扱商品も変化してきています。
一般的に訪問販売は、店舗を持つ必要がないため、大きな資本がなくてもすぐに商売が始められることから、小規模な事業者が数多く存在するのが特徴です。「マルチ商法まがい」のやり方で一般消費者が被害を蒙るケースも多々あり、日本などでは訪問販売に関する規制、法整備が進んでいます。
訪問販売を行っている業者は、ここ中国でも1000社余りあると言われています。しかし、今まで中国には訪問販売に関する明確な法律はなく、この12月1日から施行される「直銷(訪問販売)管理条例」が初めての法律となります。
この法律が施行されると、中国では訪問販売は特定の商品のみに許されることとなります。更に、訪問販売は当局に認可された訪問販売会社(資本金8千万元以上:以下単に訪販企業と言います)と契約している訪問販売員(以下単に販売員と言います)だけしか出来ないことになり、厳しく制限されます。また、日本と同様に消費者保護のための「クーリングオフ」も織り込まれています。
以下、その「直銷(訪問販売)管理条例」の概要を紹介します。
@訪問販売の定義
第三条で、「訪問販売とは訪販企業が販売員を募集し、販売員が固定された営業場所以外で直接最終消費者に製品を販売する取次販売方式を指す」と定義されています。また、販売員とは「固定された営業場所以外で製品を直接消費者に販売する人員を指す」としています。
日本では、営業所等以外の場所で消費者を呼び止めて営業所等に同行させて契約させるいわゆるキャッチセールスや、電話や郵便などで販売目的を明示せずに呼び出したり、特別に選ばれたなど他の者に較べて著しく有利な条件で契約できると勧誘して、営業所等に呼び出して契約させるいわゆるアポイントメントセールスも規制の対象になっていますが、今回の「直銷(訪問販売)管理条例」では、詳細は明確になっていません。
A訪問販売できる商品
第二条で「訪問販売製品の範囲は国務院商務主管部門が国務院工商行政管理部門と共同で訪問販売業の発展状況と消費者の需要により確定、公布する」とされています。
現在、商務部がインターネットサイトにて、「直銷(訪問販売)管理条例」の附属規定の意見募集稿を公開しています。その中の、「訪問販売製品範囲公告」(意見募集稿)によると、
(イ)化粧品 (ロ)保健食品 (ハ)個人衛生用品および生活用清掃用品
(ニ)保健器材 (ホ)小型台所用品
の5種類の製品が訪問販売できる予定です。これは日本などと較べて非常に狭い範囲での設定と言えます。
B訪販企業の設立条件
第四条で、「中華人民共和国国内で設立する企業は、本条例の規定に基づき訪問販売方式で自社生産した製品及びその親会社や持ち株会社が生産する製品を訪問販売する企業となる申請を行うことができる。訪販企業は法に基づき貿易権や小売権を取得することができる」とし、訪販企業の設立を第七条で以下のように規定していますが、かなり高いハードルとなっています。
(一)投資者は良好な商業信用があり、申請提出前の過去連続5年間で重大な違法経営記録がないこと。外国投資者は3年以上中国国外で訪問販売活動に従事した経験を有していなければならない。
(二)実際に納める登録資本が8千万人民元以上であること。
(三)本条例規定に基づき指定銀行で保証金をきちんと納付していること。
(四)規定に基づき情報報告と公開制度を確立していること。
保証金に関しては、第二十九条で、「訪販企業は国務院商務主管部門と国務院工商行政管理部門が共同指定した銀行で専門帳簿を開設し、保証金を入金しなければならない。保証金の額は訪販企業の設立時2千万人民元とする。訪問販売開始後、保証金は月ごとに調整し、その金額は訪販企業が前月直販した製品販売収入の15%レベルを保持する。但し、最高1億人民元を超えず、また、最低2千万人民元未満にならない。保証金の利息は訪販企業に属する」と規定しています。
B訪問販売員の募集と養成
訪販企業による販売員の募集は第十四条で、「訪販企業及びその支店は販売員の販売報酬に関する広告を宣伝発布してはならず、費用納付あるいは商品購入を販売員の条件にしてはならない」とし、第十五条で、「訪販企業及びその支店は以下の者を販売員として募集してはならない」と規定しています。
(一)満18歳に満たない者
(二)民事行為能力がないあるいは民事行為能力に制限のある者
(三)全日制学校に在籍する学生
(四)教師、医務員、公務員や現役軍人
(五) 訪問販売会社の正式従業員
(六)外国人
(七)法律、行政法規に規定する兼職従事できない者
また、「訪販企業は募集予定の販売員に対し業務訓練・養成と試験を行い、試験合格後に訪販企業は販売員証を発行する(第十八条)」とし、養成員の資格では「外国人員は訪問販売員の業務訓練・養成に従事してはならない(第十九条)」としています。
即ち、日本人を含む外国人は販売員になることも、販売員を訓練・養成することもできません。
C販売員の遵守義務
訪販企業と訪問販売契約を締結し養成を受けた販売員の遵守義務は、第二十二条で「販売員の消費者に対する製品の販売促進は、以下の規定を遵守しなければならない」と規定されています。
(一)販売員証と販売促進契約を提示すること。
(二)消費者の同意を得ず、消費者住所に進入し製品を強行販売してはならず、消費者がその販売活動の停止を希望する場合は、直ちに停止し、消費者住所から離れること。
(三)取引成立前に、消費者に当該訪販企業の返品制度を詳しく紹介すること。
(四)取引成立後は、消費者に対して、発票と訪販企業が発行する返品制度、訪販企業の当地サービス・ネットワーク地点住所と電話番号などの内容を含む販売証書を渡すこと
また、第二十三条では、「訪販企業は訪問販売製品上に製品価格を明記し、当該価格とサービス・ネットワーク地点で展示する製品価格は一致しなければならない。販売員は必ず標記した価格で消費者に製品を販売すること」とし、定価販売を義務付けています。
D販売員の報酬
第二十四条で、「訪販企業は少なくとも月払いにより販売員に報酬を支払わなければならない。訪販企業が販売員に支払う報酬は販売員本人が直接消費者に販売した製品収入に基づき計算し、報酬総額(コミッション、ボーナス、各種形式による奨励及びその他の経済利益など)は、販売員本人が消費者に販売した製品収入の30%を超えてはならない」と規定しています。
Eクーリングオフ
第二十五条で、「訪販企業は完全な製品交換と返品制度を確立し、実行しなければならない。消費者は訪問販売製品を購入した日から30日以内において、製品を開封していない場合、訪販企業が発行する発票あるいは製品販売証書をもとに訪販企業及びその支店、所在地のサービス・ネットワーク地点あるいは製品を販売した販売員に製品交換と返品の手続きを行うことができる。訪販企業及びその支店、所在地のサービス・ネットワーク地点や販売員は消費者が製品交換あるいは返品要求した日から7日以内に、発票あるいは製品販売証書に標記した価格に基づき製品交換と返品を行わなければならない」と規定しています。また、販売員が訪販企業から製品を購入した場合にも同様の規定となっています。
日本の法律ではクーリングオフ期間は8日から20日(適用される法律により期間は異なります)で規定されていますが、「直銷(訪問販売)管理条例」では30日と日本と較べて長く設定されています。
また、「消費者と販売員あるいは訪販企業の間で製品交換・返品によって紛争が発生した場合、販売員あるいは訪販企業が挙証責任を負担する(第二十六条)」とも規定し、消費者保護を明確にしています。
F罰則規定等
「直銷(訪問販売)管理条例」に違反した場合、企業には許認可取り消し、製品及び販売収入の没収、並びに最高50万人民元の罰金を科す(第十九条、他)規定されています。また、販売員に対しては、最高20万人民元の罰金(第四十五条、他)が規定されています。
以上、2005年12月1日から施行される「直銷(訪問販売)管理条例」について、その概要を記しました。
前述のように日本ではキャッチセールス、アポイントセールスも規制の対象になっています。また、購入者が販売業者に取引をしたいから自宅に来るよう依頼した場合、ご用聞き的取引、固定客取引、職場で職場の管理者の書面による承認を受けた事業者と取引をした場合などは、訪問販売とは見なされません。
「直銷(訪問販売)管理条例」の運用の詳細が分かり次第別途御報告します。
(3)弁護士・スタッフ紹介(第4回)
藩美琴(企業法務副部長)
弁護士・シニアエコノミスト・会計士
上海交通大学企業経営科出身。
東華電業管理局(現東華電力グループ)にて企業管理に携わる。
19年来の弁護士経験を持つ金融・税務のエキスパート。慎重な背景調査をベースにした明確で厳格な業務をモットーとし、有する豊富な経済、金融情報を基に効率的な関連法律業務を提供している。