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文文の中国茶道体験記60

                                                       

 中国茶文化&2007年上海中国茶事情  

2007年師走。今年は中国株やファンドの投資ブームと同じように中国茶の世界でも《雲南プーアール茶)が大変な高値となりました。上海の茶人達は逆にプーアール茶を買い手控え、現在少し値段が安定してきた様子です。・・・が高値である事に変わりなくまだまだ価格の攻防戦が続いています。心を養うはずのお茶が投資の対象となるとは大変困った事ですね・・。今回は人気のプーアール茶事情も含めて今年の中国茶のまとめと致しましょう。

そして、文文茶友調合茶コンテスト。

今回は《クリスマス調合茶》優秀作品5を発表します!

 

クリスマス調合茶:幸華さん作「聖誕樹」

                                                   主材料:六安瓜片(安徽省産緑茶)

■ 中国茶の起源

世界の茶の起源は中国にある。
中国茶は、最初は薬として用いられた。古代文書「神農本草経」によると、中国茶の始まりは紀元前2,700年以上前に遡る。神農氏と呼ばれる伝説上の人物は水晶の腹をもち、外から腹の中の様子が見えた。人々は彼の腹を見ることで彼が食べたものが良いものかどうかを知ることができた。神農氏はある日、100もの草を食べ、72種の中毒にかかったが、偶然食べた木の葉で救われた。白い花の咲いた木の葉を食べると腹の中でぐるぐる動きながら汚れを洗い流している様子が見えたのだ。それが茶葉の発見である。 の後、茶は飲料から唐時代には茶文化に発展する。800年頃唐代の陸羽という人物が「茶経」を著した。茶樹、製茶器具、製茶方法等が記されており、その後1,200年経つ現在でも中国茶のバイブルとして尊ばれている。

■中国人にとって茶とは

中国では、「生活必需品は、米・柴・油・塩・醤油・酢・茶の七つである」と言われ、茶は中国人にとって重要な位置をしめている。茶を以って健康な体を作り、茶を以って精神を統一し、茶を以って客をもてなし友人と交流し、茶を以って先祖を敬う。
また、国境付近の内陸地の少数民族は牛・羊肉を常食し、気候等の影響で野菜や果物等の摂取量が不足している。そのため、茶を飲む事によりその脂肪を分解し消化を助け、茶の中に含まれる豊富なビタミンにより、ビタミン不足によって引き起こされる病気を予防している。彼らにとって茶は「一日も欠かす事のできないもの」といわれるほど貴重なものである。
                                              

■日本と中国茶

中国茶が初めて日本に持ち込まれたのは、平安時代。805年に当時の中国に遣唐使として渡った日本の僧が中国大陸に渡り翌年帰国と共に茶を持ち帰ったのが始まりと言われているが、遣唐使の廃止と共にやがて衰退する。次のブームは、僧の『栄西』が中国宋に2度わたり1191年帰国した後におこった。彼は九州で茶を栽培し将軍源実朝に茶を献上して病を癒したと言われている。以後薬効が喧伝され仙薬として上流階級で広まる。また彼は『喫茶養生記』をあらわし喫茶の風習を日本に広めた。
そして800年もの時を越え現在の本格的な中国茶ブーム。日本各地で中国茶芸が習えるサロンなども増えつつある。一過性のブームが去り本当に中国茶を深く追求したい人が増えている様子が嬉しい。

■豊富な種類の中国茶

中国大陸は広い、そして中国茶の種類も豊富だ。発酵度別に、緑茶(不発酵)・青茶(半発酵)・紅茶(全発酵)・黄茶(微発酵)・白茶(微発酵)・黒茶(後発酵)の6大茶類+再加工茶(ジャスミン茶など)+茶外の茶に分類することができる。昔から上海では杭州のロンジン茶・蘇州の碧螺春・安徽省の黄山毛峰などの緑茶が好まれていたが、1990年代後半年から青茶(別称:ウーロン茶)も人気。

■根強い人気のウーロン茶

日本でもポビュラーなウーロン茶は半発酵(青茶)のお茶の別称である。半発酵といっても発酵度が丁度50%ではなくその幅は広い。
また、ウーロン茶は産地別に4つに分けることができる。

①福建省北部武夷山が産地であるミン北ウーロン茶:太古の岩と岩の間に茶樹が植えられ岩茶とも呼ばれている。天下に名が知渡る『大紅袍』は、味・香り・のど越し共に、まさに茶の王の風格を漂わせる。また岩茶には岩韻と言われる高く澄んだ残香と余韻がある。「水仙」は産量も多くポピューラーなお茶でおすすめ。どちらも、茶葉は烏龍色で長い形状をしている。

②福建省南部のミン南ウーロン茶: 最も有名なのは鉄観音。春に収穫する春茶は特に香りが良く、冬茶は特に味が良いと言われている。茶葉は香りを閉じ込めているかのように、ギュッと丸まった形をしている。「七泡有余香」と言われるように7煎淹れてもまだ香りがあるものが良い。他には「黄金桂」は金木犀の香り、「毛蟹」はほのかなジャスミンの香り、「本山」は鉄観音に良く似ているが味香りとも鉄観音に劣る。又、鉄観音より値段は安い。

③広東ウーロン茶: 鳳凰単叢(FengFuangDanCong)はフルーテイな香りで若い女性に人気。蘭・蜜・桃の香りなどのさまざまな種類がある。茶葉は烏龍色で長い形状をしている。

④台湾ウーロン茶: 種類は豊富で、茶葉は蒼蒼しくギュと丸まった形の梨山茶・杉林渓・凍頂烏龍茶・阿里山・翠玉・四季春・金宣、発酵度が低い文山包種茶・逆に発酵度の高い木柵鉄観音や紅茶に近い特色ある東方美人などの銘茶がある。 台湾の茶種を大陸に移植して作ったものが出回っているので注意。値段は安いが味は台湾産のものよりかなり劣る。

■ 投資の対象となったプーアール茶

プーアール茶は1700年もの歴史がある茶。流通が不便だった頃、茶を固めて馬に乗せて運んでいるうちに道中で風雨にさらされたり、南国のギラギラした太陽に晒され乾いたり、を繰り返し変質し到着した頃には赤く酸化して自然に後発酵してできたのが始まり。
かつては国境付近の厳しい環境にくらす中国少数民族が健康にくらすために飲むお茶であったが、現代に入りその茶の保健効用(消化作用、降血脂作用、ダイエット作用など)が知れわたり都市部でブームに。最初は、食生活が豊かになり成人病など新たな問題が発生し健康志向にマッチしたこの茶だったが、ワインと同様、良いものは古くなればなるほど味がまろやかになり価値が出るとの理由から投資対象へと変化した

●製造方法の違う2種類のプーアール茶
プーアル茶は製造方法の違いから、『生茶』と『熟茶』に分類することができる。
生茶とは:「雲南大葉種」で作られた「晒青緑茶」を蒸して固めつくられたもの。美味しく頂くまでに長い年月がかかる。2004年4月中国農業部では、先の2つの条件で作られた生茶を良い保存条件下で10年以上経過したものを正式にプーアール茶と呼ぶと定めた。新しいものは緑茶の分類に入る。
熟茶とは:安く大量にプーアール茶を作るために1973年頃に考えられた方法で、渥堆(あくたい)という人工的に後発酵させる。比較的早い時期から飲むことができる。質の良い美味しい「熟茶」の水色はブランデイーのような少し赤みがかった色。良いものは『陳香』という特有の香りがあり、カビ臭い香りはしない。味は芳醇で甘みがある。購入の際はかび臭い香りのもの、苦味のあるものは健康を害する恐れがあるので避けること。

●投機から派生した偽造の「生茶」 
2007年春頃が投機のピークとなり値段が一気に跳ね上がったプーアール茶。現在は価格の攻防戦が続いている。
昨今の激しい値上がりのため現地で増産が続き、元来の生産方法では生産が間に合わず時間を短縮する方法で生産するという悪質な業者が多数いるのは真に遺憾。「雲南大葉種」を用いて太陽の恵みを受け「晒青緑茶」を作り固めたものは年月を経るごとに美味しく変化するが、昨今は天候に左右されず人工的に作る事ができる「焙青緑茶」を固めたものが数多く出回っている。この場合年代が経るとただの古い緑茶でしかなく美味しく変化することはない。精巧にできている偽ものはこの両者の茶葉を混ぜたものもあるので真偽を見分けるのは一般の人には至難の業。購入の際は知識豊富なプーアール茶専門店がおすすめ。また、高価なものは避けた方が無難。

●プーアール茶の楽しみ方
生茶も熟茶も、茶葉の形状がバラバラの「散茶」と固めた「緊圧茶」がある。後者は丸い円盤状の「七子餅」お椀型の「沱茶」レンガの「磚茶」など様々な形があるのが面白い。こちらはどれも、誕生日や家族の記念日、または清明節など毎年日を決めて、ひとかけらづつ品茶し毎年熟成する味と香りの変化を楽しむのがお勧め。

●淹れ方の注意
2次加工時に長い時間をかけたプーアール茶は殺菌消毒の為、『醒茶』といって1煎目のお茶は湯通しして捨てる事。


■中国茶購入の際の注意

上海市工商局が、上海市内のスーパーや市場で販売されている42種類の茶葉を検査したところ、合格率は90.5%であったことを公表した。不合格の理由として、DDTなどの殺虫剤や、鉛が基準値を超えていることによる。
上海市工商局では、消費者に対して、QSマークがついているお茶を購入するように呼びかけている。

                                SQマーク


また農薬などの問題から、有機栽培の茶、野生の茶など値段は高いが人気を集めている。

 


クリスマス調合茶コンテスト 優秀作品

恒例の調合茶コンテストを開催!

 

文真さん作:暖焙焙茶(主材料 凍頂ウーロン茶)

恵恵さん作:花美茶(主材料 プーアール茶)

 

南国風のコーディネイトも抜群!

フレッシュストロベリーやミント等の副材料をグラスに入れて、

大き目の紫砂壷から芳醇な雲南紅茶を注ぎます。

文祐さん作:紅雲茶(主材料 雲南紅茶Dian紅)

 

慣れた手つきで軽やかなお手前!

 

愛賢さん作:優彩茶(主材料 プーアール茶)

 

開催ごとにパワーアップする調合茶コンテストです。香り良く美味しいだけでなく、鑑賞の美を楽しみ

身体への効果も期待できる調合茶。ネーミングもユニークなものがあり・・と

大変楽しい調合茶大会となりました。謝謝、茶友!

2008年も健康で、お茶を以ってこころの修養を致しましょう。

過去の調合茶コンテスト:夏の調合茶

 

 

 2007年12月 

Text/photo 文文

                                                   

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