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雑技は国技
「魅力上海」上海雲日之木雑技芸術団


あちこちから歓声と驚きの声が上がる人気のモーターバイクサーカス


 「中国の宝」ともいえる雑技。とても人間がやっているとは思えない数々の離れ業を披露するこの「身体の芸術」は何度見ても飽きない、上海に来たなら絶対に見逃したくないものの一つ。日本からのお客様接待の定番ともなっている。「上海雲日之木雑技芸術団」は2004年に結成したフレッシュな雑技団。地下鉄2号線「静安寺」から程近い北京西路の「雲峰劇場」で365日毎日公演を行っている。今回は特別に彼らの練習風景の取材許可を得た。

 雑技というと上海のみの伝統芸術だと思われがちだが、実は山東省、湖北省などで歴史的に盛んだという。上海雲日之木雑技芸術団も山東省で活躍していた雑技団を中心に上海で結成したものだ。


それぞれ自分の演目を勝手に練習。この練習が…

練習風景

まず第一印象は「非常にリラックスしている」ということだ。本番前のぴりぴりした雰囲気だろうという筆者の予想に反して 練習はとても和やか。本番直前になっても舞台では軽く照明の調整をし、立ち位置を確認したのみ。こんなことで大丈夫なのか、とこちらがはらはらするほど。 (もちろん事前にリハーサルは行っている)

本番ではこうなる

 団員はそれぞれ自分の出演種目を軽くおさらいしたり、柔軟体操で身体をほぐしたりしている。ふざけあったり、冗談をいったりしながらまるで学校のクラブ活動のよう。過酷で厳しいという雑技のイメージを吹き飛ばしてしまった。練習着もTシャツにジャージといった格好。特にきまりもない。このリラックスしたムードは今に限ったことではなく、海外公演の際でも同様に本番直前までリラックスした雰囲気だそう。これもひとえに日常の練習を欠かさず、演技が自分の体の動きの一部になっているからこそであろう。また団員同士は大変仲がよく、兄弟姉妹のよう。芸能界にあるような「お互いライバル」といった筆者の予想は見事に裏切られた。


年季の入った小道具。大道具

劇団の構成について

現在出演者としての団員は33名。全員が舞台にあがれる(いわゆる「控え」専門要員はいない)。女性には代役がいるが、男性は基本的に代役はいないとのことで、彼らは毎日の公演を、特別なことがない限りは休み無しでこなしている。驚くのはそれだけではない。彼らはそれぞれ一人で3,4またはそれ以上の演目に出演しているが、実際には誰でもどの演目でもすぐにこなせる状態になっているということ。だからこそ万が一の急病や怪我にも常に対応できるのだという。

雑技団の姚力生副団長に話を聞いた。

団員に時々こえをかける副団長。舞台袖で演技を見守る。

団員の生活について

(問)練習はいつ?
(姚)毎日朝6時から8時まで練習。朝食と休憩のあと、昼にリハーサルを行う。夕方にもう一度軽く練習をして本番となる。
(問)朝食では何か特別なものを食べるのか?
(姚)特別何かを食べることはないが、蛋白質を多めにとるようにしている。
(問)酢を飲むとか?
(姚)それはない。
(問)逆に太らないように食事制限とかはしないのか?
(姚)必要ない。毎日練習していれば自然とダイエットになり、太ったりはしないものだ。
(筆者注:団員は意外肉付きのいいほうだった)
(問)団員の平均年齢は?
(姚)17歳~25歳で平均年齢は22歳くらいかな。6歳から団に参加することができる。訓練を早くはじめた者ほど体が柔らかいのでその後伸びる。年齢が大切。
(筆者注:もう一人のスタッフ、フォン女史によれば2~3歳でも始められるとのこと。これは両親が雑技団のメンバー(または元メンバー)で子供に訓練する場合のことらしい)
(問)6歳では学校は?勉強との両立が大変では?
(姚)雑技学校という専門の学校に通うため勉強はそれほど厳しくない。学校には半日通うだけでよい。12歳で学校を卒業し、それ以降は専業となる。
(問)それではここのメンバーはすべて「プロ」ということになる?
(姚)その通り。今出演しているメンバーは全員12歳以上なので学生ではなく、プロだ。
(問)月給はどのくらい?
(姚)平均して1000~2000元くらい。実力で決まる。
(問)15歳程度にしては多いほうでは。
(姚)自分の両親よりも多い、という子もいる。

(問)オーディションで採用することも?
(姚)ある。
(問)その際の選考基準は?
(姚)間接のやわらかさ、忍耐力、基礎体力、もちろん外見も関係ある。
(問)もしも外国人が雑技団に入団したいと言ったら?
(姚)オーディションで合格すればもちろん問題ない。

演技について

「強いてあげれば」難度が高いという自転車14人乗り。

(問)もっとも危険な演技はどれ?
(姚)どれも同じくらい安全。我が団ではとにかく「安全第一」に興行している。少しでも危険が伴う演技では「保険帯」(命綱)をつけるから。我が団のモットーは「順利」(スムーズ)「難度」(高度な技)「好看」(美しさ)だ。
(問)モーターバイクの演技は非常に危険に見えるが?
(姚)あの球体は直径6.5メートルもあるんだよ。実際の道路でそれだけの道幅があればすれ違うのに全然危険はない。道だと思えばいい。
(問)本番で失敗したら後で怒られる?
(姚)そんなことはない。
(問)本番で失敗したときのマニュアルなどある?
(姚)3回まではやり直すことになっている。スタッフは舞台袖で励ますようにしている。それでも失敗したらそれはあきらめて次の演技にすすむようにしている。
(問)団員がやりたがる演目、いやがる演目などあるか?
(姚)特にはない。団員は少しでも難度の高いものを舞台でやりたがるが、失敗しては意味がない。それに難しいものが舞台栄えするとも限らない。そういったものはコンテストでやっている。
(問)コンテストがある?
(姚)2年に1度、中国の全国を舞台にして行われる。各雑技団の中から優秀な数人が参加する。


出演者の横顔

陳錦(15歳)

(問)今日は何に出演する?
(陳)皿回し、柔軟術など4演目に出演する。
(問)ピアスしているけど、許可はいる?(筆者注:左右の耳に2箇所ずつピアスをはめていた)
(陳)ピアスや装飾品は自由につけられる。演目によって危ないと思ったら自分ではずすようにしている。

薛剛(19歳)

(問)今日は何に出演する?
(陳)草帽子、壷バランスなど4演目。
(問)ヘアメイクさんなどはいる?
(陳)ヘアメイクなどはいない。化粧も髪型も全部自分でする。簡単。

本番では一人舞台のジョグリングも。

和気あいあいとした舞台裏で、彼らはまだ子供と言ってもいいほどの若々しさと純粋さだった。


竹登りは男子のみの豪快な演技

そして本番

観客の入りは80%といったところ。観光バスで乗り付けた観光客も多い。司会は何故か英語を中心に話し、そして中国語の説明をする。華やかなオープニングに続いて男性団員による「ポールクライミング(竹登り)」。手だけで全身を水平に支えながら登っていったり、足首だけでポールをつかんで高い位置からポーズを決めるのが圧巻。振り子のようにゆれるポールの間を飛び移るたびに客席から驚きの声が上がった。

皿を回し続けながら倒立

そして雑技の定番皿回し。  皿の下に穴があけてあるということだが、棒と皿は決してくっつけてはいない。その皿を回しながらの優美な柔軟の動き。すでに皿を載せた棒は自分の腕の一部として動いている。出演者たちも先ほどまでのあどけない表情でふざけていた子供とは違う。「プロ」になっている。

 そのほか輪くぐりでは人がひとりぎりぎり抜けられるような輪のなかをジャンプで飛びぬけたり、柔軟演技では骨や内蔵は一体どうなっているのか心配になるほど身体を曲げてしまい、また麦藁帽子をお手玉のように操る演技では若々しい男の子たちのユーモラスな演技とその微笑に胸がときめく。息を呑む緊張感、美しさに酔いしれる舞台、そして笑いも飛び出す楽しい舞台と様々な趣向の演技が続き全く退屈しない。


注目のモーターバイクサーカス「環球飛車」

 

全速力で周る。最後は4台で飛び回る。

大劇院、白玉蘭、そしてここ雲峰劇場で見られるモーターバイクサーカスはどこでも一番人気の演目のようだ。球体内で縦横無尽にバイクが走り回るだけでも驚きだが、その人数が、1人、2人と増えていくたびに観客から驚きの声があがる。スタッフによれば出演者は全員家族で、家には練習用の直径10メートルもの球体をもっているとのこと(!)。初めは自転車で練習し、次にバイクを使うらしいが、筆者の想像では自転車のほうが難しいのではないだろうか?またはじめは円柱形のもので練習し、慣れると球体で行うそうだ。
  年齢は20~25歳くらいまでいるとのことだが、最年長はどう見ても30歳は軽く超えているように見えた。2~3ヵ月後にはファミリーの一員の女の子がこのモーターバイクサーカスの演技に加わるそうだ。


そしてフィナーレ

最後は出演者全員が舞台に現れシャボン玉が飛び交う中でフィナーレ。また幕が下りてから出演者がロビーに顔をだすので、ここで握手やサインを求めることもできる。先の姚力生副団長によれば「音楽会や芝居ではなく、サーカスなのだから、観客の人はたくさん声をかけて盛り上がってほしい」とのことだ。

舞台前方はモーターバイクサーカスの出演者

 

玉乃わいん

雲峰劇院 上海雲日之木雑技芸術団「魅力上海」

場所:北京西路1700号(地下鉄2号線 静安寺下車)
公演期間:毎日 19:30~21:00

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