人工で浄化された泳げる海 ~上海市奉賢の碧海金沙水上楽園~
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ちょっと見るだけでは人工のビーチには見えない
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2006年7月13日、上海市の南東に位置し、杭州湾に面する奉賢区に碧海金沙水上楽園がOPENした。キャッチフレーズはなんと「碧い海と金色の砂」。果たして、どのようにそれを実現したのか?オープン初日の13日に早速取材に出かけた。
上海近海の海水は、長江などからの土砂が影響し、濁っていてとても泳げるような気分にはなれない。海岸もドロが堆積し、砂などは望むべくもない。筆者もこれまで上海近郊の海を幾度と無く取材に行っているが、潮風を浴びるのが精一杯だった。しかし、そんな上海でも気軽に泳げるビーチが誕生した。おそらく、今年の上海の夏で、最も注目を浴びる娯楽スポットとなるものと思われる。
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漁人碼頭エリアだが、まだテナントも少ない
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真夏の照りつける太陽の中、エアコンのないポンコツ路線バスに扇子をパタパタさせながら、ゆられること2時間、タオルを首に巻いて乗車券を売る女性車掌さんの苦労がしのばれる。やはりマイカーで行くのがお勧めなのだろう。とにかく、奉賢区は毎回出かけるのに苦労する地区だ。それでも、区が力を入れている観光スポットでもあり、バスの終点にあたる漁人碼頭付近周辺はそれなりに気持ちよく整備されている。潮の香りがほのかにし、大きな風力発電の風車が「グオン、グオン」と重い音を鳴らしている。
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エリア外側の海水の色 |
浄化されたエリア内の海水 |
ただ、ここから今回の目的地、ビーチのある碧海金沙水上楽園まで遠い。距離にして3キロほど。もちろん、タクシーもないし、三輪車の輪タクもほとんどない。30分に1本走っているシャトルバスが唯一の交通手段
。今後改善されることを期待する。
長いアプローチを炎天下の中歩くと、クラブハウスらしきものが目に入る。前から真っ黒けに焼けた市民がぞろぞろ歩いてくる。すぐに人工ビーチで遊んできた人たちと分かる。
50元の入場料を覚悟して行ったのに、今日は初日ということで無料。無料という話は聞いていなかったので、ちょっと得した気分。それもそのはずだ。砂浜と海以外は、まだ工事中の状態で、辛うじてプレハブで作られた更衣室、シャワールームが動いている程度であった。
それでも、翌14日からは有料にするとかで、大丈夫なのだろうかと不安を感じてしまった。中国で完全に完成した娯楽施設を体験したことは皆無に等しい。
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別荘エリア、海が一望できる
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ビーチのエントランス付近の駐車場、結構アプローチが長い
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エントランス脇にはクルーザーが停泊していた。水上バイクの体験なども出来る。(別途料金がかかる)バーなども設置して、この付近一帯を上海の海上レジャーの発信地にしたいと目論んでいることが分かる。
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このあたりはすべて浄化された海水 |
ところで、この人工ビーチの金色の砂、実ははるか南の海南島から洋山港を経て運ばれてきたものだ。20日間かけて砂が敷かれていった。その量は実に約12万トン!
海岸から200メートル(水深約2.5メートル)エリアまでは金色の砂が敷き詰めてあり、360メートルのエリアとなるとやっと元の海底に戻るそうだ。
この砂を使って、子供たちが遊んでいた。以前、このあたりで広がっていた足が埋まるような泥とは大違いである。
ビーチの一こま。写真のような簡易テントが設置されている
では、海水はどのように処理しているか?これも苦労のあとが伺われる。ビーチを遠くから眺めると、海域がぐるりと巨大な堰で囲まれていることがよく分かる。海水浴場の東側には広さ46.5万平方メートルの海水沈殿場が設置され、ここで沈殿・除菌が24時間かけて行われる。その後、潮の満ち干を利用して、海水浴場に注入され、循環される。そのため、理論上は1週間でビーチ内の水はすべて更新されることとなる。
利用客の安全面に関してはいろいろと工夫がされている。たとえば、近年多い雷対策として、9本の避雷針を導入し、面積79万平方メートルのビーチを雷から守っている。また10艘の船と50人の救助隊が待機していて、万が一に備えている。
ただ、この日はやたらとボートが出ていて、監視員からメガホンを片手に怒鳴られている市民を沢山見かけた。ちょっとやりすぎの監視のような気もしたが…。
左が女性用、右が男性用の更衣室
肝心のハードの設備がそのほとんどが未完成で、飲食店もまだ完成していない。とりあえず5000人分の更衣室は完成していたが、全体的に工事中であるという印象はぬぐえなかった。これから営業をしながら徐々に完成させていくのだろう。まさに中国式だ。
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開発中のゴルフ場のクラブハウス
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休憩所
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進む付近一帯の開発
ビーチ周辺は、今後の発展を見越して、さまざまなプロジェクトが行われている。まずは、休暇を楽しむための別荘群の建設も行われている。さらに、18ホール規模のゴルフ場開発、奉賢区の病院、さらに日本との合弁形式のリハビリ療養院が作られている。また旅遊区として4星クラスのホテルも整備された。今後5年間の間に、碧海金沙水上楽園は飲食・娯楽・ビジネス・レジャー・健康関連施設が集まる複合施設として発展させたいと計画している。
ただ、金山区の金山にも同じような海岸レジャー施設が建設されている。こちらも2006年7月中にOPENすることになっており、未完成のまま試験営業に入った碧海金沙水上楽園も、さっそく競争に晒されることになりそうだ。
上海はもともと遊びにいくレジャー施設が少なく、遊べるような自然環境もほとんどない。そのため、今後はいつものごとく芋の子を洗うような大混雑が予想される。
【データ】
施設名:碧海金沙水上楽園
住所:上海市奉賢区金匯塘路(星火開発区の南側に位置する)
入場料:50元(小人・学生などは各種割引あり)
その他:更衣室やロッカールームなども「一応」あります。
【交通アクセス】
自家用車:内環状線、外環状などをつかってA4(高速道路)へ、海湾路インターおりて海湾路を南へ走り漁人碼頭へ出て、さらに濱海大道を東へ3キロほど走り、金匯塘路にでる。2000台分の駐車場完備。
路線バス:瀘海専線(乗車券9元・所要時間2時間、空調なし路線バス)乗車地点は興安路(淮海路太平洋百貨の裏手)、終点下車。
シン(クサカンムリに幸)海専線(乗車券7元・所要時間1時間半から2時間、空調なし路線バス)乗車地点は地下鉄1号線の終点シン(クサカンムリに幸)庄駅南広場のバスターミナルで乗車、終点下車。
いずれも終点のバス亭からはビーチまでシャトルバスが30分に1本程度の割合で走っている。
そのほか、週末になると上海体育場の旅遊集散中心からバスが発車される計画です。(要確認)
(2006年7月記・山之内 淳)
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