TOP/FEATURE/2004年春節 第3回 「爆竹と龍華寺初詣」

 
2004年春節 第3回 「爆竹と龍華寺初詣」
 
 

 中国の「大年三十」と呼ばれる春節の大晦日は、12月31日の大晦日と比べると明らかに盛り上がり方が違う。忘年会に相当する「年夜飯」も新暦の大晦日には殆ど開かれないが、旧暦の大晦日前になるとどこのレストランも予約で一杯になる。この日のために多くの市民は早くからレストランの予約に走る。そうして12月にもなると各レストランは予約の確認に大忙しになる。レストランにすれば絶好の駆け入れ時だ。
 中国どこの地方にいっても、さらには世界中で華人がいるところではこの時期に家族がみんな集まり、食事を共にすることは非常に大切にされている。このとき、北方では餃子を包んで食べる習慣があるが、上海に関してはあまりない。家庭によっては火鍋をつついたり、それぞれの地方によってカラーが出てくる。
 こちらの新聞には日本人にもお馴染みのレストランチエーン「小南国」における「大年三十」に向けての準備の様子が紹介されていた。それによるとこの夜の「年夜飯」のために準備された食材は1200コの「紅焼蹄bang」、1500匹のスッポン、500キロのカニ味噌…などなど。500キロのカニ味噌となると2万匹のカニが必要になるわけでこれはすさまじい。さらに不足するテーブルを補うために展覧中心などのイベント場からテーブル、椅子を借りてきて、1000脚に及ぶテーブルを補給するそうだ。それでも足りないので自社オフィスの机も使うという。食器類は2万、3万と使用される。人口が多いことは本当にすごいことである。
 最近では住環境が整備されてきて、自宅で「年夜飯」を楽しむ家庭も増えてきている。そういう背景から色々なサービスが登場し、プロのコックさんを各家庭に派遣して家庭で本格的な中華料理を味わってもらう、というような企業も出てきた。一昔前なら料理の準備や後片付けで大変だったところを、これで家族全員が集まって料理を楽しめるようになったと好評だ。

 さて、食事が終わると、いよいよ爆竹が始まる。中国語では「放bian炮」という。爆竹を鳴らすには地方によって様々な言い伝えがあるが、一般的には「年」という怪物が出てきて、1年の最後の日に人を食べるために、その怪物を追い払うために爆竹を鳴らすという故事がよく知られている。

 まずは、その音を聞いていただこう。初一にあたる1月22日になった直後に録音した音だ。

 訳の分からない我々外国人にとってはとにかく「うるさい」ものなのだが、よく聞くと2種類の音があることがお分かりだろうか?一つは高昇とよばれる「ドン・パー」タイプで、筒の中のものが高く飛び上がる。こちらはお金が貯まりますようにという願いが込められている。もう一つは燃やした後に真っ赤の紙が地面に残る長く連なった「ピリピリバリバリ」タイプの大地紅だ。別名「bian炮」といわれるのは実は後者のタイプ。
 この爆竹、毎年のことだが火事の原因になっており、中国各地ではいろいろな規制が行われている。上海でも爆竹禁止地区が指定されているが、実際のところは黙認されているところも少なくない。窓から打ち上げ花火を飛ばす人や、狭い路地で爆竹をバンバンする市民が居たりして、上海市の消防署員5500人は臨戦態勢で待ち構えていた。残念ながら上海でも今年も死者が出ている。浦東では花火が原因で停電もあった。北京では今年も禁止地区以外のところへ自家用車に乗って爆竹を鳴らしに出かける人の車の列ができた。爆竹解禁地区でも事故は多発し、こちらでは2人が死亡、27人が病院に運ばれている。
 高層ビルの上から見て街を見ると、いたるところで「ドーン、ドーン」花火があがっているほか、日付が変わる12時をピークに「バリバリ」音がだんだんと増えてきてガラスがビリビリ震えた。

 翌朝「初一」は、上海でも有数の歴史を誇る龍華寺へ「初詣」へ出かけてみた。このお寺がいつに作られたかは諸説があるが、その原型は三国時代の呉の時代、赤烏年間に作られたものと言われており由緒のあるお寺だ。入り口前に建っている塔が印象的。その隣には願い事を書いた短冊をぶら下げる金ぴかの「心願樹」が設置されていて、願いを書いている市民が沢山見受けられた。
 まずお線香代として10元を窓口で支払うわけだが、これが長蛇の列。お線香は外からの落ち込み禁止、などの看板が立っている。チケットを受け取るとそのまま入り口でお線香を受け取り、いよいよお参りの開始だ。多くの人は入ってすぐ線香に火をつけるために、またここでも大混乱。そして火がついた後も、火のついた線香を胸の前に掲げて歩くので、人ごみの中で服が燃やされないか真剣に心配になった。辺りは線香の煙でモクモクだ。はぐれる人が多いらしく、境内ではひっきりなしに迷子呼び出しのアナウンスが続く。お堂の前に来ると、一般的には線香の束を両手に挟んでお辞儀して参拝するスタイルが中心。それでも熱心な信仰者はちょっとした空間を見つけては、ひざまついてお祈りしている。私も混雑に流されるまま、お参りの体制に入ったが、いったいどこの何をお参りしたのか分からないぐらいの混雑。地面にはいたるところに投げられた賽銭の小銭が散らばっていた。去年は1月1日に参拝したが、そのときは殆ど人が居なかったことと比べると、やはり中国人にとって春節がいかに重要かよく分かる。


(2004年1月取材・山之内 淳)



[FEATURE] 

webmaster@nicchu.com
Copyright 1998- 2004Shanghai Explorer