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「I live in Shanghai −1−〜上海住宅事情〜」


ビル!以前、私は虹橋古北新区のある動物の名がついたマンションに二年ほど住んでいたことがある。私が上海に着任した当時(94年)の住宅賃貸状況はひどいものだった。とにかく外国人が住むことが出来るアパートそのものが不足しており、空いていればラッキーで、内装の出来具合や家賃の安い高いは二の次であった。そして入居後もインフラの不整備、騒音に常に悩まされるというまさに三重苦であった。更に私が気に入らなかったのは、高い家賃を払ったにも関わらず、アパート名が馬、鹿、象、獅子だの高級アパートにあまりにも似つかわしくない名前だったことである。現在は「ローマ」「ロッテルダム」「ヴィクトリア」などの地名になり、若干ましにはなったもののまだそのアパートの命名法は理解に苦しむ。

 だいぶ前の話になるが、中国では建物に名前を付けるのも、非常に面倒だと言う話を聞いたことがある。例えば、現在の虹橋路沿いにある「上海世博会議大酒店」。以前は「国際会議大酒店」と言う立派な名を持ったホテルであった。しかし当局の指導によりホテル名変更を余儀なくされたという話を聞いたことがある。一度ついた名前が何らかの理由で変えられてしまうのは中国らしい。更に後になり、「北京では建設された橋の命名権利を企業に売っている」という話を聞いたし、上海の浦東でも道路の命名権利を売っているという噂を聞いた。中国は実に多くの売物があるものだ。

 話を戻そう。ともかくそんな三重苦の中での私の生活はスタートした。そもそも私が入居した当時は、現在の「ローマ」「ロッテルダム」と言った第二期工事の開始やスポーツセンターを建設中であり、昼夜を問わず本当にうるさかった。朝は5時から作業が始まり、夜9時くらいまで続く。これが毎日。そして最悪なのが「夏」である。基本的に朝の4時位から作業を開始し夜10時くらいまで作業が続く。最初、「中国人は本当によく働く」などと感心していたが、いろいろ話を聞いていると、「日中暑いうちは寝ていて涼しい夜に作業をしている」と言う情報を入手した。昼間暑いうちは休んで夜働く。これには本当に参った。寝不足の日々が続き、何度も抗議をしにに行った。これがもとで私の上海に対するイメージは「工事の音が絶えない街」になってしまった。

 更に私を恐怖の縁へ陥れた事件がある。それは「ガス漏れ」である。上海に駐在経験のある方ならご存知かもしれないが、上海のアパート、マンションのインフラ整備はかなりよくない。私の場合はガスメーターの表示用ガラスとメーター本体自体に隙間ができており、そこからガスが漏れていた。友人の何人かは私の家で気分を悪くし、一度は入院する騒ぎになった。

 上海では業者の技術の未熟により、メーター取り付け時の元栓のゆるみやメーター自身の不良、ガス給湯の場合種火消し忘れによるガスの事故が後を絶たない。

 上記の理由からも中国で住宅を探す場合、新しいアパート等はあまりお勧めできないし、もし新築のアパートに入居する場合は、相当な点検、注意が必要である。シャワーの水圧や水周り、ガス漏れ問題、隣居者入居による内装作業の騒音などトラブル発生の可能性等である。

 上海でアパートを探す場合は2、3年経過した物件を選ぶのが賢明と言えそうだ。

(編集注:本稿は1998年6月に本サイトに掲載されました)


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