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「〜夏・上海スイカ物語〜」


スイカ!また今年も上海にスイカの季節が訪れようとしている。スイカは上海の夏の風物詩として私の心に強く印象づけられている。ご存知の方も多いと思うが、この季節、街の路地にはシーズン中泊り込みでスイカを売る人が出現する。彼らの出現は夏到来を感じさせ、彼らが去ることは夏の終わり意味している。

現在、日々外地から上海に送られてくるスイカの量は日に300トンといわれ、食卓やレストランの夏のデザートとして登場する。すでに長く駐在されている方なら感じられているかもしれないが、ここ2、3年の間に上海のスイカは本当に美味しくなった。上海のスイカと一言で言ってもってもその種類は多種に渡り、値段や出回る時期ともそれぞれに異なる。ここで簡単にその種類と流行を紹介すると、一つ目は「早春紅玉」「金鳳凰」といった早熟で小ぶりのものである。その質の良さが消費者に受け、現在のところ値段の方も上海一である。二つ目は「8424」である。これはすでに上海のオールドブランドでその鮮度、甘さに定評があり、近年になり価格の方も手ごろになり多くの消費者から好まれるようになっている。三つ目は、「種無しスイカ」である。以前はその希少性から比較的高価なものとして扱われてきたが、今年になり「8424」と同様価格が落ち着いてきており、市場でもよく見かけることができる。比較的大ぶりで、味もごく一般的なスイカと変わらないのだが、新しく改良された「黄色種無しスイカ」ということで、新しい物好きな上海人の心をゲットし人気を博している。私もこのスイカを試しに食べてみたところ、その色彩はパイナップルのような感じで少し美味しそうだが、食べてみると少しザラザラしていて舌触りはあまり良くない。お世辞にもあまり美味しいとは言えないし、個人的には「金鳳凰」や「8424」の方がはるかに美味しいと思う。

上海で、しかも街頭で安くて美味しいスイカを買う時には以下の点に十分注意すべきである。冒頭に述べたスイカの売人中にはかなり悪質な者がいる。例えば街頭などでスイカを購入する場合、上海では多くの場合スイカを少し切って試食させてくれる。それにより甘くて美味しいスイカを選ぶことができる。また多くの場合はきれいにワックスが掛けられておりきちんとシールまで貼ってある。どこから見ても本物である。更に店の人は美味しいスイカを手にとって選んでくれる。自分も手にとって確かめてみるのだが、素人目に見てもズッシリと本当に立派なスイカである。しかしこれを家へ持ち帰り冷やして食べてみると全く美味しくない、というようなことがある。この理由は、まず、

  1. 「試食をした時は甘かったのに…家で食べてみると…」
    こんな場合は、試食用に使った包丁にあらかじめ砂糖水を付けておく等の細工がしてある場合が多く、これでどんなスイカでも甘く変身させることができるのである。

  2. 「ピカピカのスイカのはずなのに…」
    ピカピカのスイカのはずなのに、家に帰り洗っているとシールが剥がれて傷だらけということがよくある。これは本来、品質や産地証明のはずのシールが腐りかけた所やシミ、傷などを隠すために貼られているのである。ここまでやるのはやはり中国と言うべきなのか…大した物だ。

  3. 「手で持ってずっしり…家に帰ってぐっしょり…」
     これは中国で良く問題になるのだが、要は「注水法」。注射器などで水をスイカ中に注射して重さを増す方法。重さで商品のやり取りが行われる中国では以前から使われている。将に「水増し」である。
  とここまで書いてきたが、スイカ一つ買うためにここまでの注意が必要なのはまさに中国。本当に面白い。そしてこれらの困難を乗り越えた時に初めて最高に安くて美味しいスイカを見つけることができるのである。

スイカについて最後に一つ加えると、スイカは夏の炎暑で疲れた身体を癒すには最高で、多くの水分が喉の渇きを潤し、豊富に含まれているカリウムなどとの相乗的な働きにより、身体に涼を呼び、爽快感を与るとのことである。蒸し暑い夜、風呂上がりギンギンに冷えた特選の中国スイカを「ガブリッ」とやる瞬間に思わず「至極の喜び」を感じずにはいられない夏のKONOKでした。

(編集注:本稿は1998年6月に本サイトに掲載されました)


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