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「6月1日〜児童節〜」


 最近新聞を見ていると「失敗は成功の母である」という記事が載っていた。

 その内容は日本の家族が中国人の一般家庭にホームステイをし、相互の文化、習慣の交流を図るというものであった。

 夕食の準備をしている時の一幕。「日本の子供がまだ揚がっていない生のワンタンを食べようとしていた。日本の母親は何も言わずジーっと子供がそのワンタンを食べるのを見ていた。子供はそれを口にすると生であることを知りすぐに吐き出した。その後、その子供は生のワンタンが食べられないことを知った」

 遊ぶ子供についてのだが「皆で東方明珠の公園で遊んでいると、中国の親たちは子供が怪我をしないよう常に見張っている。日本の親は子供が遊んでいる中で目は離さないが多少の怪我は覚悟し、その怪我という行為から多くのことを学ぶことを期待している」

 上記の日本の親は共に「失敗は成功の母である」という教育観念。現代中国においてはそのような「失敗から学ぶ」という教育法は極めて少ないばかりか、中国の親達は常に子供に苦労、面倒を掛けないように教育しているので、子供が成人しても「独立心」が養われない恐れがある。

 例えば、中国の子供は小さい時から親に学校に着て行く服を用意してもらっているため、小学校に通うようになっても、どんな天気の日にどの洋服を着たらいいのか分からないのだという。また朝食を摂らない社会人の娘を心配してかばんにパンやおかしを朝食代わりに詰めて持って行かせる親など、子供に対する過保護の話しは事欠かない。

 これはもちろん現代中国の「一人っ子政策」に由来するものであり、中国では男の子供のことを「小皇帝」といい、女の子のことを「小皇后」ともいう。

 以前、こちらに駐在されているご家族の方にこんな話を聞いたことがある。家族でマクドナルドへ出かけ食事をした。子供たちは食事をしたばかりなのでコーラだけを飲み、親はハンバーガーを食べていた。すると周りの中国人はジロジロとこちらを見ながら「どうして親だけがハンバーガーを食べているのだ」と騒いでいたという。当然、中国の場合はその逆で、親がコーラだけで、子供がハンバーガーを食べるはずなのだ。そして嬉しそうな子供の様子を見て満足している。

 現代になりこの「小皇帝」と「小皇后」たちが引き起こす問題が出てきている。一番多く言われているのが「離婚問題」である。成長した「小皇帝」と「小皇后」が結婚し二人だけで生活する。生活環境の違いや意見の食い違いやに耐えられず離婚。近年、上海の離婚率は上昇してきており、離婚の平均年齢も若くなってきている。

 就業の問題もある。年齢が若いほど仕事が長続きしない。仕事に対し少しでも不満があると何も言わずに辞めてしまう。給料すら取りに来ない。これは企業にとっては本当に困る。

 「離婚」の問題に関しては、上海では数年前から「試婚」(結婚前に半年ほど同棲をして相手の性格を探る)というおかしな制度が流行っていたりする。小さい時から親、他人を思いやる気持ちや我慢する心を養っていればこんな制度は無くなると思うのだが…。

 もうすぐ6月1日「児童節」を迎えようとしている。毎年中国各地でも国を挙げて様々な催し物が行われる。それはそれで大変いいことである。しかし、こんな機会だからこそ子供に対する教育やその環境を見直し、「小皇帝」や「小皇后」が「小朋友」になってくれるのを願ってやまないKONOKである。

余談…(-_-;)
 6月1日はもう一つ大きな意味を持っている。それは私、KONOKの誕生日である…。カラオケに行き小姐に「誕生日は?」と聞かれ、小さな声で「6がつ1…」それを聞いたとたんに「児童節っ!!」と大笑いされる。かなり恥ずかしい。6月1日「児童節」。今年もまた気の重い日が訪れようとしている。

(編集注:本稿は1998年5月に本サイトに掲載されました)


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