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「江南之春」

 春です。「江南之春」です。この季節だけは上海にいられることを本当に幸せに思います。

 ところで一言に「江南之春」と言っても何を指すのでしょうか?ご存知ですか?私も自分自身口にしているのですが具体的にどんなうんちくがあるのか分からず何人かの中国人に聞いてみましたが、なかなかまともな答えが返ってきません。ある人は「江南美人の季節」と言い、ある人は「江南美人発情の季節」と言い、またある人は「物資が豊富な季節」とか言います。確かにいい意味で使われており、特に特定した意味はないようですね。個人的な主観によって使われ方はさまざまということのようです。

 では江南駐在5年目のKONOKが考える江南の春を紹介しましょう(ちなみに江南とは基本的には長江下流以南を意味し、江蘇・安徽の南部及び浙江省の北部を指し、面積で言えば日本の九州またはそれ以上に匹敵します)。

 「江南之春」をビジュアルから見ていくと基本的には菜の花の黄色、新芽の緑、春霧の白(または江南風住宅の壁の白)、空の青と四色で構成されていますね。郊外に行くとこれがずーと江南一体続いているのだからすごい(特に菜の花)。  

 次に「食」。この時期江南人は特に好んで「筍」を食べます。スープ、炒め物、鍋とあらゆる物に「筍」が入ります。事実、お手伝いさんに冬には豆腐ばかり食べさせられた私も、最近はこの季節だけだからと「筍」攻めにあっています。最近はハウス栽培などで一年中各種の菜(ツァイ)が食卓を飾るようになりましたが、漢の時代などは食べ物が豊かになるこの季節を心待ちにしていたに違いありません。

 「江南の春」について何人かの中国人に聞いた中で一人だけ一言「発情(ファーチン)」と答えたやつがいました。「江南之春」を「江南小姐発情之春」と捉えるとどうでしょう。確かに春は発情の季節のようです。この前(3月最後の日曜日)ある小姐に連れられて久しぶりに上海の街をブラブラしました。ひさしぶりに暖かな日曜日ということもあり街は早口な上海語とカップルであふれていました。その中で結構見かけたのはちょっとしたベンチに腰を掛けじゃれあいキスをしている上海人の姿です(ちょうど日本で言う日曜午後の代々木公園みたいなもの・・・)。その他にも「バス停でキス」や「ホテルの門の前でキス」と計三回のキスシーンを見せられてしまいました。冬の間は黒や茶のトックリセーターを着ている上海人が春になり突然、緑や青、白を身に付けるようになりあんな事をするなんて!!これを「江南の春症候群」と名づけるべきでしょうか?しかし私は「女の子は春になると開放的になるものだ」とい思い込んでいるので、勝手に「江南の春症候群」と名づけるのは言い過ぎでしょうね。

 だだこれを江南の田舎に当てはめるとなんとなく想像がつきます。想像してください。とにかくポカポカと暖かい、菜の花咲き蝶の舞う春。ちょうど幼稚園、保育園の頃近くの公園、畑に散歩に行った頃、まだ幼心だけに「発情」とまではいかないまでも、のんびりとした開放感に包まれたはずです。

 江南の一年で一番美しい季節「春」。恋人と自転車二人乗り。「我有一点累儿」彼女が言うから小川の辺で一休み。腰まで伸びた一面の菜の花畑で私はあなたの蝶になる・・・

 とこんな事を書いている自分が実は「江南之発情」になっていることを感じ始めていた上海のKONOKでした。

(編集注:本稿は1998年4月に本サイトに掲載されました)


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