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天津そぞろある記タイトル

Root No.30
番外編
〜我が家のアホ犬輸出大作戦〜

ぐり

この写真、一条さゆりさんとこの犬ではありません。私けようが3年前から飼っているアホ犬・ぐりです。性別はオス、犬種は雑種です。かかりつけの獣医の話では、彼の父親はペキニーズという小型犬で、母親はチベタンマスチフ、熊犬とも呼ばれる大型犬だそうですが真偽のほどは不明です(だいたいその体格差で交尾できるのでしょうか?)。毎回天津のストリートを写真とトンパ大王の毒舌付きで紹介する当コーナーですが、ここのところデジカメの調子が悪くて何を撮っても心霊写真になるため、今回は趣向を変えて「特別編・我が家のアホ犬輸出大作戦」をお送りいたします。

天津で犬を飼っている日本人は結構いらっしゃいますが、たいていの方は帰国の際に愛犬を泣く泣く知り合いの中国人に預けておられるようです。無理もありません。生き物である犬は、荷物と一緒に段ボールに詰めて送るわけにもいかず、飼い主が然るべき輸出手続を行わなければならないのですがその手続というのがたいへん煩雑なのです。連れて帰りたいのはやまやま、しかし面倒な手続の壁に阻まれて連れ帰りを諦めてしまっています。

我が家でも「大地の子計画」を考えたこともありましたがやはり連れて帰る決意をしました。そして2005年11月よりコツコツと手続を進めてきました。まだ輸出までは時間があり、輸出が成功するか否かは神のみぞ知る状態ではありますが、手続開始から現段階までの流れをこのページを借りて紹介することによって、今後天津から愛犬を連れ帰りたいと考えている日本人の方々の参考になればと思っています。なお、以下に記す情報は、とんぱ大王が気まぐれで立ち上げたもののわずか一週間ほどで更新がストップし今やGoogleで検索してもひっかからなくなってしまった、紫式部の二千円札並みに中途半端かつ影の薄い幻のブログ「Glog(グろぐ)」をもとにまとめ直しています。このブログ、トンパ大王の人間性と相反していたって真面目で網羅性も高いです。犬の輸出手続についてより詳しく知りたい方はぜひ覗いてみてください。Glog(グろぐ):http://glog.blog36.fc2.com/

トンパ大王・赤面
「自分がブログを立ち上げたことすら忘れてました・・・」

動物検疫制度

日本に犬を輸入するには動物検疫を受ける必要があり、これは農林水産省が定める検疫制度に基づいて行われます。検疫の手続は、「指定地域(狂犬病の発生のない地域・国)」と「指定地域以外」とで異なります。もちろん「指定地域以外」のほうが手続は煩雑です。中国は毎年狂犬病の発症例が見られる国なので文句なしに「指定地域以外」です。

この検疫制度、2004年11月6日に新制度が施行され、2005年6月7日より完全施行となりました。「指定地域」から輸入する場合は、旧制度と新制度との間に大差はなく12時間の係留で入国ができます。問題は「指定地域以外」から輸入する場合です。

旧制度では、「指定地域以外」である中国の場合、中国国内の任意の機関で不活化ワクチンの接種を受けた証明と中国検疫局の健康証明を準備すれば、日本到着後、管轄の動物検疫所で14日間の係留を経て入国が認められました。中国国内での手続はそれほど面倒ではありませんが、検疫所での係留機関が長く、14日間の犬の宿泊費や食費は飼い主がまかなうため、係留される犬はもちろんのこと飼い主にとっても負担の少なくない制度でした。

現在施行されている新制度が旧制度と大きく異なる点は、「マイクロチップの装着」「日本政府指定機関での血清の抗体価測定」「滞在国での180日の待機」、この3つです。中国滞在中に行わなければならない手続が増え、しかもそれがけっこう面倒で、長い待機期間も要します。犬を連れ帰りたい飼い主は、計画的に前もって手続を進めておかないと、いざ帰国したい時に手続が間に合わず結局大地の子に…ということになりかねません。

確かに中国国内での手続は煩雑なことこの上ないですが、中国でこの手続を頑張って乗り越えれば、日本到着後の検疫所での係留機関が、「指定地域」と同じくわずか12時間で済みます。日本政府は狂犬病ウイルスの日本への侵入を防ぐため、新制度の導入によって「指定地域以外」から日本に到着するまでのハードルを高くしているのです。晴れてハードルを越えられた犬に対しては「指定地域」と同様にやさしく迎え入れてくれる、そんな配慮が新制度から感じられます。ただし、日本到着後に提出書類やマイクロチップに不備があった場合、検疫所で180日の係留が課せられてしまいます。犬も飼い主も悲惨です。そうならないよう中国での手続は万事抜かりなく進めなくてはなりません。

犬の輸出手続の流れ

以下に犬の輸出手続の流れを整理してみます。( )内の@〜Dは、日本政府が犬の輸入時に証明書を求める項目です。@〜Dが確認できる中国政府機関発行の証明書が必要です。日本政府が推奨する証明書様式(フォームAかフォームC)が動物検疫所のホームページから入手できるので、手続を開始する前にあらかじめプリントアウトしておくことをおすすめします。動物検疫所ホームページ

1.マイクロチップの装着(@マイクロチップによる個体識別)
2.ワクチンの接種(A2回以上の狂犬病の予防注射)
3.血清の採取
4.血清の輸出
5.日本政府指定機関での血清の抗体価測定(B狂犬病の抗体価の確認)
6.中国での180日の待機(C180日間の輸出待機を行ったこと)
7.動物検疫所への輸入届
8.中国での健康診断(D狂犬病及びレプトスピラ病にかかっていないかまたはかかっている疑いがないこと)

中国から日本への犬の輸出手続は、中国全土で共通しており地域差はありません。ただし、日本政府が指定する手続を行える機関は、中国のどの地域にもあるというわけではありません。手続を行える機関のない地方都市に滞在の場合は、最寄りの大都市(北京・上海など)へ手続のたびに移動しなければならないので面倒です。天津の場合も、現在北京で手続を行うほかないようです。ワクチンの接種などは天津でも行えるようですが、北京は北京、天津は天津という縦割り行政が通例の中国にあって、万が一天津だからという理由であとあと北京で受け付けてもらえないことを懸念した私たちは、全ての手続を北京で行うことにしました。

1.マイクロチップの装着(@マイクロチップによる個体識別)
まず、個体識別のため、国際標準化機構(ISO)11784及び11785に適合するマイクロチップを装着します。マイクロチップの装着を行っている動物病院は、北京では「北京観賞動物医院」が一番有名です(ADD朝陽区北三環中路7号 TEL010−6237−1359 受付時間8:00〜11:30、13:30〜17:00)。病院に着いたら受付で10元支払い(掛号費)、医師にカルテを記入してもらいます。それからマイクロチップを購入し(600元)、医師に装着してもらいます。装着はものの数秒で終了。装着された部位を指で触ると、米粒大のコリコリとした感触がします。そこにマイクロチップリーダーを近づけると、「ピッ」と電子音がして個体識別のコードが表示されます。「CN××××××」という数桁の記号で、マイクロチップについてきたバーコードのナンバーと同じであることが確認できました。装着成功です。
【証明書への記載事項】マイクロチップ番号(規格、番号、装着年月日、装着部位)

北京鑑賞動物病院
北京鑑賞動物病院

マイクロチップ注入器
マイクロチップ注入器

マイクロチップ注入中
マイクロチップ注入中

マイクロチップリーダー
マイクロチップリーダー

2.ワクチンの接種(A2回以上の狂犬病の予防注射)
マイクロチップの装着が済んだら、不活化ワクチンによる狂犬病予防接種を2回行います(2回目の接種は1回目から30日以上間隔をおきます)。接種は1本60元くらいです。「免疫証書」(有効期間1年)の発給を受けることを忘れずに。
【証明書への記載事項】不活化ワクチンによる狂犬病予防注射(注射年月日、接種獣医師の住所・氏名、有効免疫期間、製品名、製造会社、製造番号)

3.血清の採取
ワクチンの接種が済んだら、血清の採取を行います。採取した血清は農林水産省が指定する検査機関に送り抗体価の検査を行います。中国には指定の検査機関がないため、血清を日本に輸出して、日本の指定検査機関である「財団法人 畜産生物科学安全研究所」(ADD神奈川県相模原市橋本台3丁目7番11号 TEL042−762−2775 FAX042−762−7979)で検査を行ってもらいます。

4.血清の輸出
上述したように、血清の採取が済んだら日本の指定検査機関に輸出しますが、これが厄介なことに、犬の血清の輸出は検疫が必要である上、さらに包装はIATA(国際航空輸送協会)650号に準拠する三重包装(一次容器、二次容器、輸送用外装)が原則となっています。この三重包装用の容器については、私たちの場合は事前に指定検査機関の「畜産生物科学安全研究所」に問い合わせて取り寄せました(※)。問題は血清の輸出です。中国では個人による血清の輸出を受け付けてくれず、必ず代理業者を通さなければならないようです。こればかりは私たちの手には負えません。幸いにクロネコヤマトさんが引越サービスの付帯サービスとして犬の輸出のお手伝いをしてくださるとのことで、お願いすることにしました。

※「畜産生物科学安全研究所」では狂犬病抗体検査に必要な機材を提供しています。マイクロチップは1470円、血清容器(一次容器、二次容器)は210円で販売、またマイクロチップリーダーは使用料3000円+保証料3万円で6ヶ月間の貸出を行っています(返却しない場合は保証料が返還されず、破損した場合は保証料で精算されます)。詳しくは同研究所ホームページをご覧ください。畜産生物科学安全研究所ホームページ

5.日本政府指定機関での血清の抗体価測定(B狂犬病の抗体価の確認)
血清が「財団法人 畜産生物科学安全研究所」に届けられると、抗体価の測定が行われます。測定の値が、基準値である0.5IU/ml(血清1mlあたり0.5国際単位)以上であれば合格です。測定結果は郵送で届けられます。私たちの場合は輸出から2週間ほどで届きましたので、かなり迅速な対応と言えるでしょう。ちなみに我がアホ犬の結果は10.3IU/mlでした。
【証明書への記載事項】狂犬病ウイルスに対する血清中和抗体価の検査結果(採血年月日、採血した獣医師の住所・氏名、検査施設名、抗体価。検査施設の結果通知書を添付)

6.中国での180日の待機(C180日間の輸出待機を行ったこと)
抗体価が基準値以上であることが証明された日から(証明された日を0日とする)中国での180日待機が始まります。輸出手続においては抗体価測定が大きな山場で、これをクリアしたらあとは消化試合のようなものです。とはいえ、マイクロチップがなくなったら元の木阿弥ですから、はずれないよう気づかいながら普段通り生活します。なお、抗体価の測定結果の有効期間は2年間なので、有効期間内に日本に到着するよう注意が必要です。

7.動物検疫所への輸入届
帰国日がだいたい決まったら、40日以上前に、入国する空港(または港)を管轄する動物検疫所に輸入届を出します。届出は、動物検疫所のホームページからできます。届出をすると「動物の輸入に関する届出受理書」が交付されます。この届出受理書は犬を飛行機に搭載する時に航空会社に提示します。また、これに記載されている届出受理番号は輸入検査申請の時に必要となります。

8.中国での健康診断(D狂犬病及びレプトスピラ病にかかっていないかまたはかかっている疑いがないこと)
中国からの輸出に際しては北京市出入境検験検疫局が発行する「動物衛生証書」が必要となります。それにはまず、動物病院(北京鑑賞動物病院)で「動物健康検査表(中華人民共和国北京国際伴侶動物健康検査表)」を発給してもらいます。それから、この「動物健康検査表」とワクチン接種の時に発給されている「免疫証書」とを持って北京市出入境検験検疫局(北京市朝陽区甜水園街6号 TEL010−5861−9040、9046、9047、9852 受付時間8:30〜12:00、13:00〜17:00)へ行き、「動物衛生証書」(有効期間14日)を発給してもらいます。

また、日本側の輸入に際しては出発直前(出発2日以内)に狂犬病及びレプトスピラ病(犬のみ)にかかっていないこと(またはかかっている疑いがないこと)を証明する中国政府機関発行の証明書が必要となります。
【証明書への記載事項】狂犬病及びレプトスピラ症にかかっていないこと又はかかっている疑いがないこと

これら出国直前の手続は北京で行うため、天津に滞在の私たちは出国の前日か前々日には犬とともに北京入りする必要がありそうです。その場合の犬の宿泊施設などはまだ不明で、おいおい調べていくつもりです。

トンパ大王
「狡兎死して良狗烹らる」

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Illust and Text by KEYOU...http://keyou.at.infoseek.co.jp/


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