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Root No.24
 白堤路(2)

スクープ! 歩道のド真ん中に椰子の木!!


ある人が盆地の京都の夏の暑さを「蓋をしたら餃子が蒸せる」と形容し、言いえて妙と膝をたたきました。天津の夏の暑さもまた、周りに山がないので蓋こそできませんが、餃子も包子(パオヅ)も蒸しあがってしまいそうなうほど強烈です。おまけに風もめったに吹かず、木の葉一枚揺れない無風状態が続きます。汗をタオルでしっかり拭いてもまだ皮膚がジットリ湿っています。秋・冬・春と乾燥しているからこそ気にならなかった道端の生ゴミ(例:小白楼の某ホテル傍)や、淀みきったドブ川(例:衛津河)が、夏の蒸し暑さのせいですえた匂いを発して存在感を現します。タクシーの中も、シートに長年染み付いた乗客の汗と埃が、湿気のせいでえもいわれぬ悪臭を放ちます。もちろん毎日お風呂に入る習慣のない地元の人々からもキツイ体臭が漂ってきます。ああ、くっさー。

私は天津の町は決して嫌いではありません(いやむしろこの町が好きだからこそ4年も住み続けているのです)が、町全体が生ゴミ処理施設と化すこの時期だけは天津を離れてどこか逃避行したくなります。ああ、南の島に行きたい。青い空と白い砂浜の見えるコテージのソファーに横たわり、細身のマッチョで過去に暗い傷を負ってちょっと影のある感じの竹野内豊似のイケメンビーチボーイに大きな葉っぱのうちわで王妃のように扇いでもらいながら冷たいココナッツジュースを飲みたい・・・と「脳内逃避行」(つまり妄想)をしていると、なんとなんと、我が家の前の白堤路沿いに突如大きな椰子の木が生えてきたではありませんか!(上写真)

いやあ、念ずれば通ず、なんですねえ。もうちょっと真剣に念ずれば、竹野内豊似のビーチボーイが大きな葉っぱのうちわを持って現れるかも?!と頬を桃色に染めていると、後ろからトンパ大王にスリッパで叩かれ、現実に連れ戻されました。目をかっと見開いてもう一度白堤路の椰子の木を仔細に観察してみると、樹の裏側に継ぎ目のようなものがありました。私はミッキーマウスの背中にジッパーを見つけたようなショックを受けました(ディズニーに怒られるかな)。椰子の木はニセモノでした。上部に目をやると細い電柱が見えました。このニセ椰子の木は、歩道のど真ん中に建てられた電柱を覆い隠すためのものだったのです。

それにしてもなぜ、わざわざ電柱を覆い隠す必要があったのでしょうか? そしてなぜ、それが椰子の木なのでしょうか? 謎は深まるばかりです。

8月10日、天津市内タクシー初乗り運賃値上げ


天津のタクシー
(なぜ路上にこんなに水があるのか?それは次の章で明かします)

もうご存じの方も多いと思いますが、今年8月10日(水)、天津市内のタクシーが一斉に初乗り運賃値上げに踏み切りました。黄色の「面的(ミエンディ)」も赤の「夏利(シャーリー)」も「桑塔拿(サンタナ)」も、もともと初乗り5元だったのが、3元増の初乗り8元になってしまいました。運賃値上げの背景にはガソリン価格の高騰がありますが、それがなくても初乗り5元というのは他の大都市に比べて大変低い設定であり、今回の8元への値上げは妥当なものだと私は思っています。

ですが、もちろん納得のいかない点もあります。「運賃あげるなら質あげろ」と、私は声を大にして言いたい。天津のタクシーの質は決して良いとは言えません。運転手の人柄に関しては、みなフレンドリーで素朴な人が多く、“ぼったくり”をするような運転手は天津駅周辺を除けばほとんど見かけません。ですが、タクシーそのもの、つまりタクシーのハード面の質は、お粗末としか言いようがありません。ドアが閉まらない、窓が閉まらない、シートが汚い、臭い、雨漏りがする、ブレーキを踏むたびにヘンな音がするなどなど、問題点は枚挙にいとまがありません。ハード面の質は安全性に直結するもの。こんな危険なタクシーには、たとえ8元(約150円)でも乗りたくはない、というのが私の本音です。タクシードライバー及びタクシー協会(というのが実際にあるのか?)の皆さん、タクシーの質向上のために、もっともっと頑張ってください!

8月16日、天津市内集中豪雨に襲われる

8月11日頃から数日間続いた蒸し暑さは異常でした。昼間の熱気が夜になっても明け方になっても収まることがなく、まるで天津市全体が大きな「蒸篭」になったかのようでした。14日の日曜日、あまりの蒸し暑さにナメクジになりかけていた私は、フォアグラになりかけているトンパ大王の健康のためにとずっと禁止していた我が家のエアコンをついに稼動させてしまいました。しかしまあエアコンというのは、文明というのは、便利でありがたい反面、非常に恐ろしいものですね。一度つけたら止められなくなってしまったばかりか、外出も億劫になってしまって、その日は1歩も外に出ませんでした。

このままでは私がフォアグラになってしまうかも…と禁断の果実に手を出したことを後悔し始めた矢先の16日火曜日、昼間から急に黒雲が広がって夜のように暗くなったかと思ったら、雷を伴う激しい雨が降り出しました。ここ数日間で溜めに溜め込んだ蒸気が一気に地上に落ちてくるようでした。正午の時点で会社のあるビルの周りは数十センチの浸水。晩はその水が引くのを待ってから退勤し、数少ない空車タクシーをつかまえて家路を急ぎました。雨はすでに小ぶりになっていて、南京路は通常の雨天と同じような状態でした。私を乗せたタクシーは南京路から長江道、白堤路の途中まで順調に進みましたが、鞍山西道の交差点に来て、私も運転手も、愕然というか唖然としてしまいました。鞍山西道を挟んで私のいる白堤路北側はほとんど水がないのに、白堤路南側はまるで大河のごとく雨水が溜まっていたのです。どうやら白堤路の中でも鞍山西道以南、復康路以北の一帯だけが浸水被害が大きいようでした。その一帯のちょうど中間地点あたりに住んでいる私は焦りましたが、運転手の機転によって迂回したため、なんとか無事に家に到着することができました。

我が家に着き、白堤路に面したベランダに立って階下の様子を覗くと、暗闇の中でたくさんの車が立ち往生していました。そのほとんどが「夏利」、やっぱりなあという感じです。ウィンカーを点滅させたまま雨水に浸かっている主(あるじ)不在の夏利の姿はなんとも憐れでした。同情しながらも、これで夏利がお釈迦になって新車のきれいなタクシーが増えたらいいなと思いました。

一夜明けて、雨は止み、白堤路上の水もだいぶ引きましたが、それでもまだ20センチほど水が残っていました。朝の通勤ラッシュでバスや車がたくさん走っていましたが、各車両が走った後には白いさざなみが立ち、まるで競艇場のモーターボートのようでした。白堤路沿いの歩道は、まるで浜辺のように波が寄せていました。その時私はハッとしました。ここは大雨の時だけ現れる浜辺なのだと。白堤路ロングビーチ、うーん…。これは私の憶測に過ぎませんが、前述の電柱を包んでいるニセ椰子の木は、電柱を浸水から守る防水の働きをしているのではないでしょうか。とすると、浸水時の白堤路を浜辺のように見たてて椰子の木をデザインした設計者は、なかなかのユーモアの持ち主ですね。


まるで競艇場のように波立つ白堤路


人々は裸足で恐る恐る…

某月某日、「日賀拉面」カルフール白堤路店1階にオープン

恐らく最近だと思うのですが、カルフール白堤路店1階の片隅に「日賀拉面」がオープンしました。「日賀拉面(ラーメン)」は、3年ほど前から天津市内を中心にチェーン展開しているラーメン店。南京路の「津匯広場」の地下1階をはじめ、カルフール海光寺店1階、古文化街の近くの新世界購物広場(旧新安購物広場)地下1階など、天津市内の主要ショッピングスポットに必ずと言ってよいほど店舗があり、店舗展開戦略に手堅さが窺えます。3年前カルフール海光寺店内に日賀拉面がオープンしたばかりの頃に「純日本式のラーメンが味わえる」という謳い文句に踊らされてワクワクしながら食べに行きましたが、スープがぬるく、また麺に工夫もなく、期待したほどの味ではなくてガッカリしました。あれから数年経った今、味が改善されたかどうかは店にしばらく行っていないので分かりませんが、天津撤退どころかこうして次々と新店舗がオープンしているところを見ると、天津人のウケはそう悪くもなさそうです。この白堤路店オープンを機に今度また味わってみようと思います。

それにしてもこのどっからどう見ても「ペ○ちゃん」のキャラクターには、日本の某洋菓子メーカーが黙っちゃいないだろう、と思うのですが…。


ママの味

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Illust & Text by KEYOU... http://keyou.at.infoseek.co.jp/

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