TOP連載中国大衆ラーメン完全制覇への道/第6回 読者おすすめの上海麺

     

 

一風堂・河原成美の

中国大衆ラーメン完全制覇への道

 

第6回 読者おすすめの上海麺はなかなかの実力者だった

まずは具を載せないで、スープそのものの味を楽しんでほしい

 


■ 上海ラーメンの老舗に挑戦 ■


殺風景だけどお客さんの活気で店内はエネルギーが充満している
 上海ラーメンの真の実力を見極めるには、どの店に行けばいいのか。悩んだ末に、ある店の名前を思い出しました。このコーナーの掲示板で読者の方がおすすめしてくれた『滄浪亭』は、どんなラーメンを出す店なのだろう。ドライバーの小陸に尋ねてみました。

 「ああ、『滄浪亭』は有名です。老舗ですね。やっぱり蘇州のスタイルでしょうが、いまやあれが上海ラーメンの定番といっていいでしょう。市内に何店かあるけど、ここからだと淮海中路の店が近いですね」

 おっと、いつになく的確な返答じゃないか。「よし、そこに行っておくれ」と声をかけると、「ようガス!」とうれしそうにアクセルを踏み込んだ小陸。でも淮海路の渋滞に巻き込まれてしまいます。

 「ここからは歩いた方が早いと思いますよ」と小陸が言うのも納得。店は上海の超繁華街の路面1階にあるのです。うーん、東京の一等地と変わらない家賃で商売を成り立たせているのだからすごい。今回は強敵かもしれぬ。

ラーメンマン河原の背筋も伸びるというものです!

調味料棚に化学調味料が置いてあるのは自信があるのか、ないのか
 夕方5時前という時間のわりに、店内はたくさんのお客さんで賑わっています。みんなが食べているドンブリをのぞくと、醤油系のスープが多いな。澄んだ塩系スープもあります。じゃあ、その両方を注文しましょう。

 この店は値段もなかなかですね。たとえば京葱牛肉面は18元、八宝辣醤面は22元。ぼくたちの日式ラーメン店『享食78』と同じくらいの単価だね。

 料理が運ばれてくるまでの間、店内を見わたしていると、真ん中あたりにたくさんの容器が並んだ棚を発見しました。塩、砂糖、コショウ、化学調味料、各種辛みそ、ネギやおろしニンニクを自由に取っていいようです。ぼくはそれらを少しずつ小皿にとって準備万端。ラーメンの登場を待ちます。





■ 麺はツルツルじゃなくてアムアム ■

具を変えることでバリエーションが広がる。また来なきゃ
 前回同様、具は別皿で出てきます。まわりの中国人のお客さんは、いきなり全部の具を麺の上に載せて、ガーッとかき混ぜますが、ぼくはまずスープをすすってみました。

 材料は豚ガラと鶏ガラ。かなり薄いスープですが、それはそれで上品にまとまっています。特に醤油スープは出来がよろしい。塩味が足りないのは、具とのバランスを重視しているせいでしょう。前回の店とは違い、化学調味料が少ないのでキレが残っているんですね。

 ぼくは先ほど取ってきた調味料各種を使って独自の味付けをしてみました。塩度を調え、コショウをかけて、ほんのわずかのおろしニンニクをスープに溶きます。うん、これなら日本で醤油ラーメンとして売れるかもしれない。

 麺はどうかというと、これは中国の麺料理全般に言えることですが小麦粉の質が良くないので香りは薄く、発色も悪い。ちょっとグレーがかっています。でも、歯ごたえもあり、かるみもあり、コシもある。日本人にも好評だというのは納得できます。

 ただね、これもこの店だけの特徴じゃないのですが、麺が異常に長い。だから日本人のぼくたちには食べにくいんですね。いくらすすり込んでも終わりがないので、口の中が麺で一杯になってしまいます。

 まわりのお客さんを見ると、麺を歯で噛みちぎるようにして食べている。そうか日本人にとって麺はすすり込むものですが、中国人にとってはかぶりつくものなのかもしれない。ラーメンを食べる中国人を見ていると、カツ丼をかき込むときの日本人を思い起こしてしまいます

 「長い麺を食べると長生きする」という縁起かつぎという面もあるのでしょうが、根本は麺をかたまりでハグハグ、アムアム食べるのが好きなんでしょう。日本人は麺を食べるとき、唇の擦過感を楽しみますが、中国人は歯の感触を味わう。なるほど、これが前回おぼろげながらわかりかけていた日本人と中国人の麺に対する考えた方の違いだったのか、とひとり膝を叩きました。

 いよいよ具を載せてかき混ぜてみました。味にパンチが出ますが、個人的にはちょっと甘すぎるかな。でも、全体としての仕上がりは上等です。情報を提供してくれたメンマさん、どうもありがとう。勉強になりました。ぼくも淮海路に行ったときは、またこの店に立ち寄ることでしょう。

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