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第52回 活動中の2度の涙(第3章)
平成20年度3次隊 湖北省恩施市 湖北民族学院医学院附属医院
看護師 板井良依(徳島県出身)


■ある日の出来事
 ある日病室で、患者さんの話が聞き取れず、「すみません、私は日本人なので聞き取れません」と言うと、横で若い女性が「鬼子来了~(鬼子が来た~)」と言いました。中国では日中戦争のドラマをよくやっているので、『鬼子』という単語が日本人に対する良くない言葉ということを私は知っていました。
 はじめは「なんで自分がそんなことを言われないといけないのか」と腹が立ちましたが、その後「自分は何のためにここで活動してるんだろう」と思って悲しくなりました。それから数日後に、また病室で同じ言葉が聞こえてきました。私がその言葉に反応すると、それを言ったおじさんが「おれら中国ではあなたたちのことを『日本鬼子』って言ってるの知ってるか?」って言ってきはりました。私は「知ってます」と言って、はじめはこらえてたんですが、やっぱり悲しくって「私は傷つきました」と自分の気持ちを言うと、こらえきれなくなって涙が出てきてとまりませんでした。病室にいた人たちが「彼らはきっと冗談で言ったの。傷つかなくていい」となぐさめてくれると、よけいに涙が出てきて、もうその場にいれなくなり、病室から離れました。

■当直室で
 きっと言った人にとっては、あまり蔑称という認識はないのだろうと思いますが、日本人としてはやっぱりどこか責められているような、とても嫌な気持ちになりました。前回の出来事から日にちもあまり経っていなかったので、よけいに悲しかったんだと思います。
 当直室に行くと副婦長さんがいて、泣いているのが見つかってしまいました。理由を知って副婦長さんは「あなたが傷つかなくていい。彼はあなたが来た目的とか友好のことを知らない。泣かないで。」と言って、手を握ってなぐさめてくれました。その後、同僚も次から次にやってきて「気にしなくていい」とか「傷つかなくていい」と言って、なぐさめてくれました。このことは本当に嬉しかったです。

(2010年8月)



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